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小回り道悪に対応したファッショニスタ/スパーキングレディーカップ回顧(斎藤修)

  • 2019年07月05日(金) 18時00分
 今年の梅雨はしとしと降る雨は少なく、梅雨末期のようなまとまった大雨が多い。したがって地方のダートは水が浮くような不良馬場での競馬が少なくなく、レース後の解説で「道悪、先行有利」と言ったり書いたりしていることが多いような気がする。この日の川崎もまた、不良馬場で逃げ・先行馬が残る決着が多く見られていた。

 そしてスパーキングレディーカップもしかり。JRA勢ではもっとも人気のなかったサルサディオーネが逃げて2着に粘り、2番手を追走したファッショニスタが直線でとらえての勝利。能力差以上に着差がついたというのも、道悪・前残りの典型的なパターンだった。

 とはいえ有力馬には先行タイプが多く、どれが逃げるか予想するのも難しかった。実際に逃げたサルサディオーネのほかにも、同じく不良馬場だったかきつばた記念を逃げ切ったゴールドクイーンファッショニスタも前走オープンが逃げて2着、マドラスチェックも逃げるか2番手で結果を残してきた。

 最初のスタンド前の直線は、抜群のスタートを切ったファッショニスタが先頭。サルサディオーネは2番手だったが、岩田騎手は押して行って1コーナーを回るところでハナを取りきった。JRA勢では唯一外枠に入ったゴールドクイーンはその2頭を見ながら3番手。最初の600m通過が35秒8で、1000m通過60秒8はいかにも速い。それでも「行かないと持ち味が出ない馬なので、自分の競馬に徹しました」と岩田騎手がレース後に話していたように、結果2着だったとはいえ、前残りの馬場にはやや強引とも思える逃げが正解だった。

 レースの上りが39秒8のところ、サルサディオーネは40秒6だからさすがに最後は一杯になった。それでも39秒台の脚を使えたのが、勝ったファッショニスタと3着のローレライだけ。それ以外の馬たちはすべて上り40秒台かそれ以上かかっていて、最後は脚色が一緒になってしまった。典型的な道悪・前残りのパターン。それは6着以下に沈んだ別定1kg増の3頭(ミッシングリンクラーゴブルーゴールドクイーン)にはさらに影響が大きかったかもしれない。

 それだけに2番手から直線でサルサディオーネをとらえ、ゴール前の100mだけで4馬身突き放したファッショニスタのレースぶりが際立った。2番手の外でまったく砂をかぶらない位置をスムーズに追走。向正面に入ったあたりでは3馬身ほど離される場面もあったが、手応えは十分。前のサルサディオーネだけをとらえればいいという競馬。重賞勝ちがないとはいえ実績面から1番人気に支持され、不安があるとすれば初めての地方コースと道悪だったが、その両方をじつにうまくこなした。その結果が、ハイペースの2番手でも上り最速の39秒4だった。

 驚かされたのが南関東B1勝ちまでという実績で11番人気ながら3着に入ったローレライ。この馬の勝ちパターンは、ハイペースの前崩れでの末脚勝負。今回、前の2頭は止まらなかったが、それ以外の馬たちの脚が上がったところ、ローレライは3コーナーまで11番手、脚を溜めていたことで持ち味を発揮した。2着サルサディオーネからは6馬身差がついたが、4着マドラスチェック、5着マルカンセンサーとはクビ、クビというわずかの差。4コーナーでぴったりラチ沿いを突いたことも大きかった。

 マドラスチェックは少しずつのロスがいくつも重なっての4着。スタートで押していったが、先行2頭の脚色がいいと見ると、下げて外に持ち出そうとした。そのときに砂をかぶって嫌がる素振りもあり、外に持ち出すスペースを探している間にかなり位置取りを下げてしまった。1番枠で逃げられればよかったが、そうはならなかったためむしろ1番枠が裏目に出てしまった。向正面で位置取りを上げていったのはよかったが、結果的に3、4コーナーは大外を回らされることになってしまった。

 対照的にラチ沿いぴったりを回ったローレライとのクビ差は大きかった。これがコーナーのきつい川崎コースの難しいところ。ラチ沿いを突いて抜けられればいいが、抜け出せるところがまったくないこともある。3、4コーナーでラチ沿いを突くか、外を回すかは、ときに勝負の分かれ目になる。気楽に自分の競馬に徹したローレライに対して、マドラスチェックは勝ちに行かなければならないという立場の違いもあった。今年デビューしたJRA騎手では目下最多勝の斎藤新騎手には厳しい競馬になったが、経験にもなったことだろう。

 5着にも南関東B1を連勝していたマルカンセンサーが入った。ただこの馬は昨年末にC1選抜で4着に敗けたあと、年明け初戦のTCK女王杯で2着という実績があった。南関東のこのクラスの馬でも、牝馬同士のグレードでは展開の助けがあれば上位食い込みは可能ということでもある。

 逃げたいゴールドクイーンに、JRA4頭の中で1頭だけ外枠は厳しかった。さらに1、2コーナーではやや外に膨れるような場面もあった。一般的に小回りと言われる1周1100mの名古屋で勝ってはいるが、名古屋コースは直線が短いぶん、コーナーは意外とゆったりしている。左回りは中京で一度だけ経験(昇竜S)して10着。コーナーのきつい左回りは合わなかったかもしれない。加えて、ハイペースの3番手追走でスタミナが要求されるような流れになり、1400mまでしか経験がなかったこの馬にはいかにも厳しかった。

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