フルゲートの16頭が第55回
函館記念のゲートを飛び出した。
大方の予想どおり、
田中勝春が乗る4番の
マイスタイルがハナに立った。ゲートから出して行ったぶん、やや勢いがついたが、手綱をガチッと抑える鞍上と呼吸を合わせ、1コーナーを回って行く。
2番手は
マイネルファンロン、3番手は
ドレッドノータス。
単騎で逃げる
マイスタイルから2番手は4馬身ほど離れ、2番手の
マイネルファンロンから3番手も4馬身ほど、3番手以降も3馬身ほど離れる展開となった。
前半1000m通過は59秒8。平均ペースと言える流れなのだが、先頭から最後方までは12、3馬身離れている。
3コーナーから後続の騎手たちの手の動きが激しくなるが、なかなか前との差が詰まらない。4コーナーに入り、ラスト400m標識を通過したところで、先頭を行く
マイスタイルの外から
丹内祐次の
マイネルファンロンが並びかけてきた。
マイネルファンロンのほうが手応えがよく、やや前に出て直線へ。ラスト200m地点で、丹内の右ステッキが入る。
一気に呑み込まれるかに見えた内の
マイスタイルが食い下がる。田中の左ステッキに反応してグイッと伸び、
マイネルファンロンを差し返した。
そのまま
マイスタイルが外からの追い込みを封じて優勝。
田中は
JRA重賞50勝という節目の勝利をマークした。
クビ差の2着が
マイネルファンロン、1馬身3/4差の3着が4番手につけていた
ステイフーリッシュという「行った行った」の結果となった。
勝ちタイムは1分59秒6。後半1000mも前半とまったく同じ59秒8。デビュー31年目の田中が見事なイーブンペースをつくり、レースを支配した。
1番人気の馬が
函館記念を勝ったのは、
エリモハリアーが連覇を遂げた2006年以来13年ぶり。なお、同馬は翌年7番人気でここを勝ち、同レース3連覇を達成した。北村浩平、安藤勝己、
武幸四郎と3人の異なる騎手で
函館記念を3連覇した
エリモハリアーは、重賞勝ちがこの3つのみという、まさに
函館記念の申し子だった。
マイスタイルにとっても、これが初の重賞タイトルだった。全5勝のうち3勝が函館芝2000mでのものだ。
4コーナーで並びかけられても慌てることなく函館巧者の力を引き出すことができたのは、田中が、この馬の勝負根性を信じていたからだろう。
(文:島田明宏)