3歳限定のダート重賞、第11回
レパードステークスのゲートから、15頭の出走馬が飛び出した。
ほぼ横一列になった隊列から、正面スタンド前で、8番
ハヤブサナンデクン、13番
サトノギャロス、15番
ビルジキールらが先頭をうかがい、1コーナーへと向かっていく。
単勝24倍の10番人気だった
田辺裕信の
ハヤヤッコは6番枠からのスタートだった。
スタート直後は田辺が首を押して促していたが、なかなか前に取りつくことができなかった。
「前のほうにポジションを取って競馬をしようと思っていたのですが、流れが速かったので、ついていくのをやめました」
そう話した田辺はスタンド前を通過したころには追っつけるのをやめ、後方におさまった。
向正面に入ると、馬群は15馬身ほどの縦長になった。後方4、5番手の
ハヤヤッコと先頭との差は10馬身ほどか。
1000m通過は1分0秒1。
3コーナーで
ハヤヤッコの白い馬体が躍動し、外から徐々に進出する。
そのままスムーズに4コーナーを回り、先頭を5馬身ほどの射程にとらえて直線へ。前は綺麗にあいている。
ラスト200m手前で、1番人気の
デルマルーヴルが内から先頭に躍り出た。
その外から
ハヤヤッコが猛然と追い上げる。さらに外から来た
ブルベアイリーデと併せ馬の形になり、田辺の右鞭に応えて末脚を伸ばす。
激しい叩き合いから
ハヤヤッコが力強く抜け出し、内の
デルマルーヴルをクビ差で差し切った。
勝ちタイムは1分51秒3。
自身にとってのみならず、白毛馬による初めての
JRA重賞制覇を果たした。
「後ろから差す競馬をして、レースに幅ができましたし、距離の融通も利くと思うので、今後が楽しみです」と田辺。
ハヤヤッコの
母マシュマロは、2008年に
関東オークスを勝ち、日本の白毛馬として重賞初制覇をなし遂げた名牝
ユキチャンの全妹だ。
ユキチャン、
マシュマロ姉妹の母が、この白毛ファミリーの開祖となった
シラユキヒメである。その父は
サンデーサイレンス。
シラユキヒメに
クロフネを付けて
マシュマロが生まれ、さらに
キングカメハメハを配合して
ハヤヤッコが誕生した。
レースぶりにも血統にも奥がある。
ハヤヤッコを漢字にすると「速奴」か。ネーミングもビジュアルも目立つ、ニュースターが誕生した。
(文:島田明宏)