古くから競馬サークルには「死んだ種牡馬の子は走る」という言葉がある。
ディープインパクト産駒カデナ(6番人気)が2着した
小倉記念、同じくディープ産駒の
ミッキーグローリーが優勝した
関屋記念の結果を見ると、確かにその“格言”は生きているかもしれない。
その意味で悩ましいのはディープ産駒4頭、キンカメ産駒3頭が出走予定のGII
札幌記念か。実績や今後のローテを踏まえれば、
凱旋門賞をにらむディープ産駒
フィエールマンが表の主役。ただ、“裏の主役”も注目だ。
ランフォザローゼスはディープ肌のキンカメ産駒、
ワグネリアンはキンカメ肌のディープ産駒。“格言”通りなら、激走指数が高いのはこの2頭ということになろう。
「体のサイズはディープ。ただ、体つきはゴツゴツしてキンカメっぽい。それぞれのいい面が出ているんじゃないですかね」
ワグネリアンを送り出す
友道康夫調教師は13日の札幌競馬場でこう語った。加えてオーナーが金子真人氏とあれば、昨年ダービー馬の復活はまさにこの舞台がふさわしい。
「確かに今回、結果は欲しいですよね。洋芝、小回りコースがベストとは思いませんが、体の
バランスが崩れていた前走の
大阪杯(3着)とは違って、今回はゆがみもなく不安点はすべて解消されていますから」
これは同馬を担当する藤本純助手の弁だが、続けて放った言葉も当方には極めて印象的だった。
「キンカメが死んでしまったことで、かわいそうにこの子は完全にみなしごになってしまったんです。
母ミスアンコールは昨年の北海道地震の影響で死去、今夏は父に続きおじいちゃんまでですからね。同じ北海道の地で父母、祖父にささげる勝利を挙げられれば…とは思うんです」
今回は4か月半ぶりの実戦。とはいえ、臨戦過程を見れば本気度は明白だ。7月6日の初時計から始まり、栗東で長短9本の時計を坂路とウッドでマーク。札幌入キュウは10日前でも、栗東からの移動にノーザンファーム天栄(2泊3日)を挟み輸送リスクを回避する繊細さが、陣営の意気込みを示すかのようである。
「初の札幌で最初はパドックも普通に歩けない感じだったけど、環境にもなじんできた。前走の反動がなかったのは成長しているということ。ここから始動して3戦くらい行けるかな」と締めた友道調教師。同馬の親孝行はこれからだ。
(札幌の泣き虫
ハッチ野郎・山村隆司)
東京スポーツ