夏競馬も
クライマックスを迎え、調教にも盛り上がりを見せる札幌&函館両競馬場に比べ、ひっそりとした中で行われているのが小倉競馬場。土日の開催を終えると、馬運車は列をなして栗東トレセンへとUターン。水曜朝の時点で滞在馬は65頭。数百頭の馬が小倉にとどまって調整していたひと昔前を思い起こすと、閑散とした調教風景に寂しさを感じてしまう。
では夏の小倉開催はいかにして滞在競馬ではなくなってしまったのか。その要因を語ってくれたのは安田隆調教師。現在、トップを突っ走るリーディングトレーナーにして、ジョッキー時代は開催45週連続勝利記録を樹立した“小倉男”だ。
「アクセスが格段に良くなったことが一番だと思います。それに現地でのダート調教では、普段のウッド調教に比べて故障を負うリスクも高まります。相対的に見て滞在調整でのデメリットのほうが大きくなったということなのでは」
さらに時代の流れに即した理由を明かしてくれたのは大橋調教師。
「何度も輸送するより、そのまま小倉にいたほうが馬にとってはいいに決まってる。ただ、人員の問題もあって、現実的には難しいところもあるんだ。今は20馬房のキュウ舎なら、普通はスタッフ12人体制。小倉に馬を残して人数をかけてしまうと、栗東の調教がままならない状況になる。その上、6週間と短くなった開催で小倉滞在馬が競馬に何度出走できるか。その保証もないからね。昔とはシステム自体が変わってきているんだよ」
そんな状況下において、小倉にとどまって調整を続けているのが
エイシンデネブ。開幕週の3勝クラス・
佐世保Sを鮮やかな追い込みで制し、
北九州記念を目指していたのだが、どうやら賞金不足で出走はかないそうにない。では小倉居残り調整は失敗だったのか?
「
佐世保Sを勝った時点で“
北九州記念には出走できないかも”って話はあったんだけどね。それでも急きょ残って調整しようということに。着替えなんかの身の回りのものは現地調達だったから大変だったけど(笑い)。落ち着きがあっていい調教をできているし、馬にとってはいい滞在だったんじゃないかな」(原口助手)
エイシンデネブは昨夏も小倉開幕週のレースを好時計で勝ったものの、一旦は栗東に戻して臨んだ昇級戦でパフォーマンスを落とした経緯がある。その後2走も頭打ちの成績に…。
「あのころはキュウ舎解散が近かったこともあって、無理をしたところも。でも今はすごくいい雰囲気なんですよ」と転キュウ前から担当を続ける原口助手が話すように、
エイシンデネブはたとえ
北九州記念を除外になろうとも、先々で昨年以上の活躍を見せてくれるに違いない。
先週の日曜メイン・
博多Sは、小倉滞在調整で入念なスクーリングを行った
アロハリリーが勝利。そして今週は輸送状況に遅れの生じやすいお盆時期。時代に逆行する小倉滞在調整馬がひっそりと平場で活躍してくれる予感がしてならない小倉滞在野郎なのである。
(小倉のバーン野郎・石川吉行)
東京スポーツ