担当馬が年単位で一度も勝っていない厩務員が結構な数いるこの世界において、オープン馬の担当になれるのは本当に幸運なことだ。まして、それが複数ともなると、よほどツイてる人間か、半端ない腕利きか…。
「オープン馬を2頭同時に担当するのはそうあることじゃない。俺も長いことやってきたけどさ。長浜厩舎時代に
アグネスゴールドともう一頭、オープン馬を担当していたときぐらいかな」とは現在、宮本厩舎に在籍する吉田助手。かつて
ファビラスラフインの担当でもあった腕利きですらこうなのだから、やはり簡単なことではない。
そんな中、2頭どころか、3頭ものオープン馬を担当しているのが音無厩舎の濱田助手だ。もちろん、2頭担当制の
中央競馬では3頭を同時にトレセンで世話することはないのだが、
クリソベリル、
ダンビュライト、
ブラックスピネルの3頭をうまく回して、やりくりしている。
「すごく責任を感じるし、気を使うことも多いけど、やりがいがあるし、先生には感謝している。今年6勝のうち、重賞が4つ(
クリソベリル=交流GII
兵庫チャンピオンシップ、交流GI
ジャパンダートダービー、交流GII
日本テレビ盃、
ダンビュライト=GII
京都記念)でオープンが1つ(
ブラックスピネル=
白富士S)。こんなことって後にも先にもないでしょうね(笑い)」(濱田助手)
リーディング上位の音無厩舎にあっても、この活躍は頭ひとつ抜けており、まさに今、“濱田は買い”なのだ。当然ながら、GII
京都大賞典(6日=京都芝外2400メートル)にエントリーしている
ダンビュライトも要注意である。
「放牧明けで多少緩みはあるけどね。でも、これだけ間を空けたことは今までなかった。骨折(左第1指骨剥離骨折)自体はそう大したことはなかったし、馬も落ち着いている。かえっていい休養になったんじゃないかと思っているんだ」
緩みがあると言いながら、1週前追い切りでは坂路4ハロン50.7-12.7秒の好タイムをマーク。持ってる男の担当馬だけに、骨折のアク
シデントすらも“功名”になっているのか。
「馬場入りとかに課題がある馬だし、引き続き一番よく分かっている(松若)風馬が乗ってくれるのはいいと思う。前走の
大阪杯(9着)だって、大外枠を考えれば上手に乗ってくれたもの。意外性のある馬だし、いきなり走っても驚けないよ」
ダンビュライトが勝てば、濱田助手は今年早くもオープン6勝、重賞は5勝目。一年でどれだけ星を伸ばせるのか、本当に楽しみでならない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ