「舞台が
リニューアルされるころは、さすがに現役とはいかないですから。この馬が得意の京都で競馬ができるのも来年春まで。走る機会は限られているので本番(
天皇賞・春)まで全力投球したいと思っているんです」
GII
京都大賞典に
グローリーヴェイズを送り出す
尾関知人調教師が、しみじみとした口ぶりで秋初戦への意気込みを示したのは1週前追い切り(9月26日)の後だった。それもそのはず。京都競馬場は開設100周年を迎えるにあたり、スタンドや施設全体の整備工事を来年2月からスタート。それに伴い、競馬開催も同11月から23年3月まで休止が決まっている。同馬にとって京都はデビューから全8戦中5戦を選択してきたホームグラウンド。加えて曽祖
母メジロラモーヌから受け継ぐ“メジロの血”が騒ぐ古戦場でもある。今回は
ステップレースの枠を超えた惜別への“カウントダウン”なのだ。
かつて同師は「京都が得意な馬は3コーナーからの下り坂を上手に走る」と語ったことがある。思えば、それを体現したのが前走の
天皇賞・春だった。
フィエールマンにクビ差及ばなかったが、優勝馬の背後からひたひたと迫った3コーナーからの走りは迫力満点。過去の勝利は
日経新春杯の1勝のみでも“京都の申し子”たる姿を最後まで見せつけたい思いはきっと強かろう。一方で指揮官はこんな言葉も漏らしている。
「この夏に天栄で調整を進めていく中で“気合が足りない感じがする”との報告を受けたんです。これまでこっちのイメージで動けていたのが、思ったよりズブさを見せている。ただ、競馬を経験していく中で落ち着いてきたというのは、完成期に入ったということかもしれません。実際、体もデビューから一戦ごと増えて成長してきた馬が、今回は同じ体重での出走となりそうですからね」
帰キュウ後の姿に感じたのは、内面の変化を含めた“古馬らしさ”だった。裏を返せば、無難に
宝塚記念をパスした春とは違い、これからは勝負手を打ってくる可能性も十分あるということ。ならば「馬が完成してくれば距離も2400メートルくらいが一番合いそう。今回の結果で先が見える」との言葉は、一方で未来を見据えての“脱・京都”宣言かもしれない。次走が
ジャパンCか暮れの香港かは未定だが、今回が得意分野を広げる重要な舞台となるのは確かである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ