重賞で惜敗を続ける馬と、条件戦連勝で勢いのある馬が、一緒の舞台に立った時、いったいどちらが買いなのか?競馬記者になる以前から、悩むポイントだった。
ライトユーザーからすれば、馬名を耳にしがちな前者に食指が動こうとしたところで、馬柱に1着が並ぶ上がり馬を見つけると、「ちょっと待てよ…」。思わずマークシートを塗る手が止まってしまう。今年の
京都大賞典は、まだ競馬記者歴の浅い私に、そんな難題の模範解答を求める、格好の例題のようにも見えてくる。
未勝利戦を最後に、勝ち鞍こそないものの、数々の重賞で強豪としのぎを削る“最強の1勝馬”
エタリオウと、500万下からの3連勝で初重賞に挑む
シルヴァンシャー。同世代ながら、対照的な戦歴でここにたどり着いた両4歳牡馬、果たしてどちらを買うべきなのか…。
まず
シルヴァンシャーの3連勝は中身も濃い。特に2走前(
境港特別)に破った
メールドグラースがその後、連勝街道をバク進中。すでに重賞3勝を挙げているとなると、
シルヴァンシャーもまた重賞タイトルを奪取できる能力は十分にも見える。当然、陣営からも威勢のいいコメントが出ていて「勝ち続けているのだから当然、勢いに乗ってますよね。馬も自信をつけているはずだし」と兼武助手。
ただし、「ここが試金石。どこまでやれるか楽しみです」という締めのコメントから察するに、自信はあっても、あくまで
チャレンジャーの立ち位置で臨む気持ちが表れている。
対して
エタリオウ。
宝塚記念9着惨敗は、おそらく
天皇賞・春でのマクリ不発(4着)のダメージが残ったもの。勝手ながら参考外とさせていただく。それ以前の競走を振り返ると、
フィエールマンにハナ差2着の
菊花賞を筆頭に、惜しい競馬ばかり。もうひと押し何が足りないのだろうか? この疑問を友道調教師にぶつけると「やはり勝ちたい気持ちが足りなかったんでしょうね」と。
教えてもらった話を要約すれば、もともと高い能力はあったが、気性の難しさがネックで、馬具の工夫など、厩舎スタッフの手厚いケアにより、常に重賞で勝ち負けするところまで持ってきた馬なのだという。それだけに“そろそろタイトルを”の気持ちも強かろう。
素直に冒頭の悩みどころをぶつけてみたところ、「1着はなくても、重賞で強い馬を相手に際どい競馬を続けているほうが当然、そのクラスでの経験値という面で有利ですよね」と師は歯切れ良く回答してくれた。
ちなみに今回は浜中騎手のテン乗りになる
シルヴァンシャーに対し、
エタリオウは前走に引き続き横山典騎手が手綱を取る。師いわく「クセがある馬」に対して、2度目の名手がどんな騎乗を見せてくれるのかも興味深いところだ。
やはり、あらゆる意味での“経験”という面で
エタリオウに一日の長がある、と判定したい。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ