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吉原騎手の思い切った騎乗でサンライズノヴァがJpnI初制覇/マイルCS南部杯回顧(斎藤修)

  • 2019年10月15日(火) 18時00分
 台風の影響で輸送が心配され、地方馬の中には輸送に相当時間を要した馬もいたようだが、取消や除外とはならず一安心。ゴールドドリームなど中央の何頭かは2日前に盛岡競馬場に到着していたとのことだった。

 前日の開催は不良馬場でスタートしたが、台風一過の日差しと風で馬場は急速に回復。南部杯当日は第1レースから良馬場発表となった。盛岡のダートコースは良馬場でもかなりタイムが出ることがあって、今回の南部杯の勝ちタイム1分34秒2は、歴代2番目に速いタイム。2016年の南部杯コパノリッキーが出したコースレコード1分33秒5(稍重)にコンマ7秒と迫るもの。それをみずから早めに動いて勝ちきったサンライズノヴァのレースぶりは見事だった。

 絶対的な逃げ馬がいない反面、行く可能性のある馬は何頭かいて、その中からロンドンタウンノボバカラが競り合うように先行し、3番手以下との差を広げてレースを引っ張った。

 同じ1600mでも、3〜4コーナーを回るだけの盛岡や東京と、船橋のようにコーナーを4つ回る競馬場の違いは、最初のコーナーまでの距離。船橋のように300mほどで1コーナーというコース形態では、よほど無理に競り合う馬でもいない限りコーナーの入口あたりで隊列が決まってペースが落ち着くが、東京や盛岡では3コーナーまでの直線が長いため行く馬がいればどんどんスピードに乗ってしまう。馬体を併せてスピードに乗った2頭の前半800m通過45秒7は、オーバーペースというほどではないものの厳しいペース。後半は48秒5とややかかって、レースの上り3Fが36秒6のところ、サンライズノヴァは35秒7の上りで前をとらえ直線で抜け出した。

 サンライズノヴァは、ユニコーンS武蔵野Sに続いて重賞3勝目。すべてワンターンのマイル戦。3歳500万下を京都で勝っているが、それ以外の勝ち星はここまですべて東京コース。左回りのほうがいいということもあったかもしれないが、ペースが緩まないスタミナも要求されるマイル戦で能力を発揮した。今回は“ペースが緩まない”というより、早めに仕掛けていって“ペースを緩めない”展開で押し切った。

 サンライズノヴァは後方から直線勝負の脚質で、たしかに前走プロキオンSでもメンバー中最速の上りを使って脚を余したような4着だっただけに、直線があまり長くない地方のコースでそうした脚質は懸念材料とされる。しかしそれは当然騎手もわかっていることで、中央では普段後方からレースを進めているような馬でも、地方のダートグレードでは意外に前目につけるようなケースもたびたびある。地方のダートグレードの場合はメンバーの能力差が大きく、実際に勝負になるのは出走馬の半数かそれ以下であることがほとんど。馬群をさばききれないということもなく、よほど出遅れでもしない限り無理せずに前目の位置を取ることが容易になる。

 サンライズノヴァは相変わらずスタートがよくなく、今回もゲートが開いた直後はほとんど最後方だった。しかしスタートしてからの直線が長いだけに慌てることもなく、じわじわと位置取りを上げて行って、周回コースと合流する400mほど進んだあたりでゴールドドリームの直後7番手につけた。南部杯は中央と同日開催ということもあり、今回も中央馬7頭のうち3頭に地方騎手が騎乗。それでサンライズノヴァの鞍上となったのが吉原寛人騎手。3コーナーから一気に動いていって、直線を待たず4コーナーで一気に先頭をとらえきる思い切った騎乗は見事で、直線の坂を上がってアルクトスを交わしてからは余裕があった。

 2着だったアルクトスは、前で競り合った2頭からやや離れた3番手を追走。ペースを考えれば絶好の位置取り。そのうしろにモジアナフレイバー、地元同士なら逃げているパンプキンズが続き、さらにゴールドドリームサンライズノヴァという位置取り。手応え十分のアルクトスは、4コーナーあたりでうしろにいるゴールドドリームを待っているような感じ。ちらりと田辺騎手がうしろを振り返り、ゴールドドリームが来ていることを確認してから追い出した。しかしそのとき、外から仕掛けたサンライズノヴァはすでにスピードに乗って勢いが違っていた。アルクトスは直線も伸びてはいたが、勝ったサンライズノヴァに1馬身半差。今回が初のJpnIで、初めての地方コース。まだ4歳でもあり、この経験を次に生かせればというところ。

 なんとか3着は確保したのがゴールドドリーム。ペースを考えれば道中の位置取りはいつものとおりだったが、レースが動いた4コーナー手前での行きっぷりが悪く、このあたりでもう勝ちはない感じだった。かしわ記念以来の休み明けが原因なのかどうか。目標はまだ先ということもあるだろう。一昨年の南部杯が致命的な出遅れ、昨年は3歳のルヴァンスレーヴがびっくりするほど強かった、と、敗因ははっきりしていたものの、三度目の正直が叶わなかっただけに、コースや環境への相性というのはあるのかもしれない。

 あらためて能力があるところを見せたのが大井のモジアナフレイバー。あわや3着というクビ差の4着で、逆にゴールドドリームはもう少しのところで3着も外すところだった。4コーナー手前でサンライズノヴァの外に馬体を併せて上がっていくときの迫力はすばらしかった。新馬戦以来のマイル戦がどうかと思われたが、帝王賞では直線で一旦は先頭に立とうかという場面があり、勝ったオメガパフュームに1秒1差で5着というのはダテではなかった。5日前の浦和・埼玉新聞栄冠賞にも登録があったが、こちらに遠征してきたのは陣営にもそれだけの自信があったのだろう。

 マーキュリーC連覇でコース適性が期待されたミツバは中団追走ままの6着。ペースが緩まないマイルのスタミナ勝負と、2000m以上でのスタミナ勝負では、求められる適性が違う。

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