今年ほど食指の動かない
菊花賞もめったにない。「
ヴェロックスに3000メートルは長い」と考えているにもかかわらず、それに対抗する馬が見当たらないのだ。
ワールドプレミアはちょっと良さげな気もするが、それも人気がなければ…の話。「前走(
神戸新聞杯3着)よりもかなり良くなってきた」(大江助手)とはいうものの、完成を迎えるのは「来年の暮れ」と断言されてしまった馬をドカンと買っていいのかどうか――。もちろん、その他の馬も五十歩百歩。
菊花賞は大好きなレースだが、今年は小銭で遊ぶくらいが正解のような気がする。
友道キュウ舎の馬でドカンと勝負するなら、
菊花賞前日のGIII
富士S(東京芝1600メートル)。今年の
NHKマイルCの覇者と
ヴィクトリアマイルの覇者が激突する一戦だが、おそらくは前者で何の問題もないだろう。
2歳夏の段階から完成されていた(とされる)
アドマイヤマーズのすごさ。それは完成されているはずなのに、その天井がまるで見えないところにある。
休み明けの今回もそうだ。パッと見で、ひと回り大きくなったことがわかる素晴らしい馬体。またまた成長して戻ってきた同馬に、大江助手も「正直、伸びシロがあるのか…と思ったこともあったんです。2歳の時点ですべてのレベルが高く、
バランスも整っていましたからね。なのに、この馬は放牧に出すたびに良くなって帰ってくる。それも1か所だけが成長するとかでなく、すべての部分を底上げしてくる。なので、
バランスがまるで崩れない。これほどの馬はなかなかいませんし、将来的には父の
ダイワメジャーを超える馬になるんじゃないかと思ってます」と賛辞を惜しまない。
ちなみに次走は
マイルCSではなく、
香港マイルで世界制圧に乗り出す予定(香港の情勢にもよるだろうが…)。
「
ビューティージェネレーション相手でも…。そう思える状況で香港に行きたい」と大江助手の目はすでに国外へと向いているのであれば、この
富士Sは単なる通過点と断言してしまっていいだろう。正直、興味はパフォーマンスの内容と単勝オッズのみである。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ