天皇賞・秋の優勝会見で発した
国枝栄調教師の言葉は、
アーモンドアイの本質を突いた名言だったと思う。
「すごいって言うか、驚いた。おっかないって言うか...」
規格外というより、もはや別次元なのだろう。戦前に
クリストフ・ルメールが「80%」と伝えたように、仕上げは“やむを得ず”の
トライアル仕様。1週前の時点では「◎を打てない」と感じたほどだ。それでもフタを開ければ、他のGI馬9頭を問題にしない3馬身差の圧勝...。
人知をはるかに超えた力----。それが他でもない“
アーモンドアイ級”ということだろう。引退のカウントダウンが迫る中、前走が日本でのラストランになる可能性もあるだけに、多くのファンの眼前で見せた素晴らしい走りには、感謝と敬意の念を抱かずにいられない。
さて、GIシリーズの谷間になる今週も、引き続き注目するのは国枝厩舎。というのも、GIII
ファンタジーSに出走予定の
ディープインパクト産駒マジックキャッスルの雰囲気が妙にいい。
「全体的に硬さがあって、走りもあまり弾んでいないんだよねぇ」
番頭格の鈴木勝美助手が渋い顔でこう伝えたのは、クビ差2着に惜敗した前走・
サフラン賞(中山芝8ハロン)当時。小気味いいピッチ走法で後続に4馬身差をつけた初陣(福島芝6ハロン)も短距離向きの印象を残したが、どうしてどうして...。距離延長の前走も
新潟2歳S(0秒4差)、
アルテミスS(0秒2差)ともに3着の
ビッククインバイオを余裕で捕らえたのだから奥がある。
「一度使った今回は柔らかみが出て、むしろ馬にフレッシュ感があるんだよね。当初は俺もス
プリンターのイメージだったけど、稽古を積むにつれて距離が持ちそうな印象に変わってきた」(同助手)
血筋もあろう。
母ソーマジックは中山ダ6ハロンの未勝利戦で初勝利を挙げた後、
春菜賞(東京芝7ハロン)→
アネモネS(中山芝8ハロン)を連勝してGI
桜花賞も3着と健闘。その姿をなぞらえるように、娘もマイラーへの変身をたどる。
「競馬が上手でゲートも遅いほうじゃないが、今回は慌てて位置を取りに行かなくていいかな。しまいを生かす競馬でも十分チャンスがある馬だと思う」と同助手。
GI制覇で活気づく国枝厩舎、その“アーモンド効果”に今週も期待しよう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ