第57回
アルゼンチン共和国杯で、果敢にハナを切ったのは、
松岡正海が騎乗する障害界の絶対王者・
オジュウチョウサンだった。最後の瞬発力勝負になって10着に敗れた前走・六社Sの反省から、自分で競馬をつくり、後ろになし崩しに脚を使わせ、底力勝負に持ち込む算段か。
横山典弘が乗る2番人気の
ムイトオブリガードは好位3、4番手の内で脚を溜めている。
ターフビジョンに表示された1000m通過は1分2秒0。思いのほかゆったりとした流れになった。
オジュウチョウサンが先頭のまま、4コーナーから直線へ。
オジュウチョウサンの手応えには、前走より余裕があるように見えた。
オジュウチョウサンは、鞍上の叱咤に応え末脚を伸ばす。簡単には後続に呑み込まれない。
ラスト400m地点。
オジュウチョウサンがまだ先頭だ。が、さすがに苦しくなり、内外から他馬に並びかけられる。
そのなかでも最も勢いがあったのが、
オジュウチョウサンの内に進路を取った
ムイトオブリガードだった。ラスト200m地点では体ひとつ抜け出していた。
父
ルーラーシップにも、
母ピサノグラフにも騎乗経験のある横山の右ステッキに応え、先頭でゴールを駆け抜けた。昨年1番人気で2着に敗れた雪辱を晴らし、見事、重賞初制覇を遂げた。
2着
タイセイトレイルを1馬身1/4突き放す完勝だった。
「思い描いていたとおりのレースができました。1頭になるとふわふわするところがあるけど、今日は一生懸命走ってくれました」と横山。
祖母は
マイルCSなどを勝った名牝
シンコウラブリイ。そこに
サンデーサイレンスと
ルーラーシップの血が入って中・長距離での適性を得た良血馬の今後が楽しみになった。
なお、
オジュウチョウサンはブービーの12着に敗れた。もっと速い流れをつくりたかったようだが、行きっぷりが今ひとつで、自分向きの流れをつくることができなかったようだ。掲示板に載った5頭がみな33秒代で上がる流れになったなか、自身は35秒4の脚しか使うことができなかった。
(文:島田明宏)