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ピークの仕上げで展開もはまったブルドッグボス/JBCスプリント回顧(斎藤修)

  • 2019年11月05日(火) 18時10分
 先行争いは、やはり激しくなった。いつものとおり抜群のダッシュを見せたノブワイルドだが、サクセスエナジーファンタジストコパノキッキングに競りかけられ4頭が横に並んだ。ノブワイルドは内枠ゆえに引くわけにいかず、左海騎手は手綱をしごいて1コーナーを回るところでハナを死守した。それで記録したのが2F目の10秒5というラップ。

 前走オーバルスプリントで完璧に逃げ切ったノブワイルドは、スタートから5F目まで、きれいに11秒台後半のやや速めの平均ラップを刻んで最後まで余力を残すことができた。しかし今回は厳しいマークで前半に脚を使わされてしまった。サクセスエナジーは1コーナーを回るところで控えたが、ファンタジストコパノキッキングは雁行状態でピタリと追走し、なおもプレッシャーをかけてきた。

 これが浦和1400mの、先行争いが激しくなったときの前崩れのパターン。やや離れた5、6番手からミスターメロディショコラブランが4コーナー手前で前に迫ったが、それでも仕掛けるタイミングが早かった。

 コパノキッキングが直線単独先頭に立って押し切るかに思えたところ、これを差し切ったのが、中団から3コーナー過ぎで一気にまくってきたブルドッグボス。3着に入ったトロヴァオは3コーナーで9番手、4着に入ったノボバカラは3コーナーでまだ最後方という位置取りだった。前崩れとなって、前半無理して追いかけなかった伏兵に幸運が巡ってきた。

 とはいえ、ブルドッグボスの勝利は幸運だけによってもたらされたわけではない。クラスターC(5着)、オーバルスプリント(6着)では見せ場をつくれなかったが、東京盃では、勝ったコパノキッキングに4馬身差とはいえ、2番手で粘るサクセスエナジーをとらえて好調を思わせた。今回はその東京盃以上に強い追い切りで、さらに状態は上がっていたのだろう。

 それにしてもレースを使いながら、ここ一番でピークに仕上げる小久保調教師の技術はすばらしい。一方でノブワイルドは、習志野きらっとスプリント、プラチナCを連闘で制し、そのあとのオーバルスプリントピークだったかもしれない。

 今年ここまで地方馬ではGII/JpnII以上のタイトルを制する馬がいなかったが、JpnIの中でも特に評価が高いJBCを制したことで、ブルドッグボス年度代表馬に大きく近づいた。

 そして“負けてなお強し”というレースを見せたのがコパノキッキング。3コーナーから鞍上の手が激しく動き出したノブワイルドに対し、コパノキッキングは抜群の手応えのままとらえ、直線を向いて単独先頭。藤田菜七子騎手のGI/JpnI初制覇なったかに思われた。しかし最後は脚が上がってブルドッグボスにわずかクビ差、交わされた。

 1コーナーをまわるところでコパノキッキングが引いていたらどうだっただろう。もしそうすればファンタジストも無理にはノブワイルドを追いかけなかったかもしれず、そうなるとノブワイルドには少し楽なペースになって逃げ切っていたかもしれない。駆け引きは難しい。

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