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鞍上の経験と好騎乗でヴァケーション/全日本2歳優駿回顧(斎藤修)

  • 2019年12月19日(木) 18時00分
 今年の2歳ダート戦線は、中央だけでなく、注目の北海道デビュー馬も、南関東も、いずれも主役不在の混戦。その頂点を争うここでも単勝一桁台が5頭いて、1番人気は兵庫ジュニアグランプリで2着に負けていたメイショウテンスイだったということでもそれを象徴していた。結果、上位3頭はアタマ、1/2馬身差という接戦となって、勝ったのは地元南関東の生え抜き、2着は中央のダート連勝馬、3着は北海道デビューの重賞勝ち馬だった。

 惜しくも2着に負けたとはいえ、レースの流れを支配したのはアイオライト。距離延長をはじめとして、左回りや地方のナイターなど、さまざまに初めての条件ながら、デビュー3年目の武藤雅騎手が逃げ馬としてほとんど完璧なレース運びを見せた。今年川崎ではラインカリーナでJpnIIの関東オークスを制しており、さらにJpnIへステップアップとなるところだっただけに、悔しいアタマ差だっただろう。

 そのアイオライトは、ダートに替わっての2連勝が大外枠だったのに対して今回は最内枠。きついコーナーへの対応が難しい川崎コースだけに、逃げるのは決めていたのかもしれない。これまで芝のレースも含めて控えての競馬だったが、ダートでの2戦は抜群のスタートを見せていただけにハナに行ける自信もあったのだろう。今回も抜群のスタートダッシュを見せた。デビューから4連勝がいずれも逃げ切りだったインペリシャブルも行く気を見せたが、枠順の内外でアイオライトがハナを取りきった。

 インペリシャブルにぴたりと直後につかれ、アイオライトには楽な流れではなかったはず。それでもペースを緩めず、むしろ向正面中間からペースアップして、メイショウテンスイテイエムサウスダンら有力勢に差を詰めさせなかった。

 直線を向いて、“後続に影をも踏ませぬ逃げ切り”になるかに思われた。実際、中央の有力勢に対してはそうなったのだが、さすがに最後の2Fで14秒2、13秒6と行き脚が鈍ったところで一気に迫ったのが、縦長の中団よりうしろで脚を溜めていた南関東の2頭だった。

 勝ったヴァケーションは、前走平和賞では直線だけで後続を突き放す抜群の末脚を見せていた。3着のティーズダンクは、北海道2歳優駿こそ前残りの流れで見せ場を作れなかったが、勝ったサンライズCでは、前の5、6頭が競り合う展開で、4コーナー7番手から直線大外一気を決めていた。ともに終いのキレを信条とするタイプ。アイオライトの逃げをインペリシャブルが突いてくれたことで、この2頭の持ち味が生きることになった。レースの上り3F(=アイオライトの上り3F)が40秒7のところ、ヴァケーションは39秒2、さらにうしろの位置取りだったティーズダンクは38秒7という末脚を使った。

 アイオライトを差し切ったヴァケーションに対して、1/2馬身とらえきれなかったティーズダンクとの差は、4コーナーでのコース取り。ヴァケーションが4コーナーで内から2頭目のところを突いて、勢いをなくした人気2頭を内から交わし去ったのに対して、ティーズダンクはその外を回ってきた。ただ外を回した石川倭騎手を責めるわけにはいかない。3〜4コーナーをスピードに乗ってまくってきたところ、川崎のきつい4コーナーでいきなり内に切れ込むのは難しいし、他馬に迷惑をかけることにもなりかねない。仮に内に行けたとしても、前が壁になって外を回す以上にロスがあったと思われる。これが川崎コースの難しいところ。

 ヴァケーションの勝利は、吉原寛人騎手の前の流れを読んだペース判断と、南関東での騎乗経験を生かした好騎乗によるところも大きかった。吉原騎手は今年、中央のサンライズノヴァに騎乗した南部杯でJpnI初制覇を果たし、さらに先週のクイーン賞(船橋)もクレイジーアクセルで逃げ切っていた。この秋以降の勢いはすばらしい。

 一方、人気2頭は、メイショウテンスイが3着のティーズダンクから2馬身離れての4着でテイエムサウスダンはそこから1/2馬身差で5着。メイショウテンスイは向正面から追い通しで行きっぷりが悪く、テイエムサウスダンはゴール前で止まってしまった。

 人気上位の中央勢の比較では、アイオライトは1200mしか経験がないことから距離が疑問視されたが、ダート2連勝では直線での伸びが素晴らしかっただけに、距離延長でも能力を発揮した。逆に距離延長と緩みのない流れに対応できなかったのが、兵庫ジュニアグランプリ1、2着で人気を集めた2頭だったのではないか。3番人気で9着だったキメラヴェリテは、そもそも勝った北海道2歳優駿のレースレベルが疑問で、先行しないと持ち味を発揮できない。

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