今年の2歳ダート戦線は、中央だけでなく、注目の北海道デビュー馬も、南関東も、いずれも主役不在の混戦。その頂点を争うここでも単勝一桁台が5頭いて、1番人気は
兵庫ジュニアグランプリで2着に負けていた
メイショウテンスイだったということでもそれを象徴していた。結果、上位3頭はアタマ、1/2馬身差という接戦となって、勝ったのは地元南関東の生え抜き、2着は中央のダート連勝馬、3着は北海道デビューの重賞勝ち馬だった。
惜しくも2着に負けたとはいえ、レースの流れを支配したのは
アイオライト。距離延長をはじめとして、左回りや地方のナイターなど、さまざまに初めての条件ながら、デビュー3年目の
武藤雅騎手が逃げ馬としてほとんど完璧なレース運びを見せた。今年川崎では
ラインカリーナでJpnIIの
関東オークスを制しており、さらにJpnIへ
ステップアップとなるところだっただけに、悔しいアタマ差だっただろう。
その
アイオライトは、ダートに替わっての2連勝が大外枠だったのに対して今回は最内枠。きついコーナーへの対応が難しい川崎コースだけに、逃げるのは決めていたのかもしれない。これまで芝のレースも含めて控えての競馬だったが、ダートでの2戦は抜群のスタートを見せていただけにハナに行ける自信もあったのだろう。今回も抜群のスタートダッシュを見せた。デビューから4連勝がいずれも逃げ切りだった
インペリシャブルも行く気を見せたが、枠順の内外で
アイオライトがハナを取りきった。
インペリシャブルにぴたりと直後につかれ、
アイオライトには楽な流れではなかったはず。それでもペースを緩めず、むしろ向正面中間からペースアップして、
メイショウテンスイ、
テイエムサウスダンら有力勢に差を詰めさせなかった。
直線を向いて、“後続に影をも踏ませぬ逃げ切り”になるかに思われた。実際、中央の有力勢に対してはそうなったのだが、さすがに最後の2Fで14秒2、13秒6と行き脚が鈍ったところで一気に迫ったのが、縦長の中団よりうしろで脚を溜めていた南関東の2頭だった。
勝った
ヴァケーションは、前走
平和賞では直線だけで後続を突き放す抜群の末脚を見せていた。3着の
ティーズダンクは、
北海道2歳優駿こそ前残りの流れで見せ場を作れなかったが、勝ったサン
ライズCでは、前の5、6頭が競り合う展開で、4コーナー7番手から直線大外一気を決めていた。ともに終いのキレを信条とするタイプ。
アイオライトの逃げを
インペリシャブルが突いてくれたことで、この2頭の持ち味が生きることになった。レースの上り3F(=
アイオライトの上り3F)が40秒7のところ、
ヴァケーションは39秒2、さらにうしろの位置取りだった
ティーズダンクは38秒7という末脚を使った。
アイオライトを差し切った
ヴァケーションに対して、1/2馬身とらえきれなかった
ティーズダンクとの差は、4コーナーでのコース取り。
ヴァケーションが4コーナーで内から2頭目のところを突いて、勢いをなくした人気2頭を内から交わし去ったのに対して、
ティーズダンクはその外を回ってきた。ただ外を回した
石川倭騎手を責めるわけにはいかない。3〜4コーナーをスピードに乗ってまくってきたところ、川崎のきつい4コーナーでいきなり内に切れ込むのは難しいし、他馬に迷惑をかけることにもなりかねない。仮に内に行けたとしても、前が壁になって外を回す以上にロスがあったと思われる。これが川崎コースの難しいところ。
ヴァケーションの勝利は、
吉原寛人騎手の前の流れを読んだペース判断と、南関東での騎乗経験を生かした好騎乗によるところも大きかった。吉原騎手は今年、中央の
サンライズノヴァに騎乗した
南部杯でJpnI初制覇を果たし、さらに先週の
クイーン賞(船橋)も
クレイジーアクセルで逃げ切っていた。この秋以降の勢いはすばらしい。
一方、人気2頭は、
メイショウテンスイが3着の
ティーズダンクから2馬身離れての4着で
テイエムサウスダンはそこから1/2馬身差で5着。
メイショウテンスイは向正面から追い通しで行きっぷりが悪く、
テイエムサウスダンはゴール前で止まってしまった。
人気上位の中央勢の比較では、
アイオライトは1200mしか経験がないことから距離が疑問視されたが、ダート2連勝では直線での伸びが素晴らしかっただけに、距離延長でも能力を発揮した。逆に距離延長と緩みのない流れに対応できなかったのが、
兵庫ジュニアグランプリ1、2着で人気を集めた2頭だったのではないか。3番人気で9着だった
キメラヴェリテは、そもそも勝った
北海道2歳優駿のレースレベルが疑問で、先行しないと持ち味を発揮できない。