今のダート短距離路線は混沌としている。2019年だけの成績でいえば、主役候補と言えそうなのは、ともにダート
グレードで3勝を挙げた
コパノキッキング(
根岸S、
東京盃、
カペラS)、
ヤマニンアンプリメ(
北海道スプリントC、
クラスターC、
JBCレディスクラシック)だが、前者は
JBCスプリントで2着に敗れ、後者はJBCでは牡馬との対戦を避けてレディスクラシックに回った。この2頭以外、2019年中に1400m以下のダート
グレードを複数制する馬はいなかった。
その混戦の一端を示していたのが、今回のハンデ。例年、JpnI・
JBCスプリントの勝ち馬がいれば59kgか59.5kgのハンデとなり、それがいなかった昨年でも
マテラスカイが58kgだった。
しかし今年のトップハンデは57kgで
テーオーエナジーと
ノボバカラ。このレース、過去に一度も地方馬が勝っていないという状況でも、今回の中央勢は例年よりレベルが低いという判断だったのだろう(ハンデ戦になったのは2007年から)。それで台頭したのが、重賞未勝利の3歳馬だった。
“今回のメンバーでは”という但し書きが付くものの、それにしても
デュープロセスは強いレースを見せた。56kgは、馬齢の
アローワンスを考えれば実質トップハンデだったともいえる。
地元では圧倒的なスピードを見せている
ナチュラリーが抜群のダッシュを見せたが、これを制してハナに立ったのが
デュープロセス。逃げるつもりはなかったとのことだが、初めてブリンカーをつけて臨んだということでは、選択肢にはあったのだろう。そして他馬には影をも踏ませぬ逃げ切りとなった。
2番手集団で追いかけたのは
ナチュラリーのほか、初ダートの
ランスオブプラーナに、2歳時に
兵庫ジュニアグランプリを制した
ハヤブサマカオーだが、これらがそれぞれ7着、10着、8着。さらに向正面中間から仕掛けた
テーオーエナジーも9着と、早めに
デュープロセスを追いかけた馬たちはいずれも着外に沈んだ。
一方で2着に入ったのは、4コーナー9番手から大外を伸びた地元の
イルティモーネ。地元のA級特別では1400mでもなかなか勝ちきれず、さらに距離短縮の1230mでようやく素質を開花させた。とはいえ重賞タイトルはなく、今回は人気薄ゆえ、1400mでも最後の一瞬に賭けたのがハマった。
3着が高知の10歳馬
サクラレグナム。
テーオーエナジーのあとを追うように進出し、直線半ばでは
デュープロセスをとらえようかという勢いがあった。
デュープロセスの勝ちタイム1分27秒4は、過去の勝ちタイムと比べて平凡なもの。タイムの出やすい重馬場だったことを考えるとなおさらだ。昨年4着だった
サクラレグナムをものさしにすると、昨年は52kgで、勝った
ウインムートから5馬身ほども離されたが、今年は53kgで
デュープロセスから1馬身ほどの差。
たしかに地元で2連勝中と好調ではあったが、さすがに10歳になって前年からの上積みというのは考えにくい。それらのことから、
デュープロセスの強い勝ち方に、冒頭で“今回のメンバーでは”という但し書きを付けた。
2番人気だった
ノボバカラは中団を追走し、向正面から追い通しでようやく4着。
JBCスプリント(4着)のあと放牧を挟み、馬体重+13kgの520kgは生涯最高体重。今回もゲート入りではかなり苦労していたように、そうした影響はあったのだろう。
残念だったのは最下位の
ラブバレット。過去3回制している笠松
グランプリが、岩手競馬の薬物問題の関係で出走できなくなり、今回は川崎に移籍しての出走。輸送があっての+13kgは本調子ではなかったのだろう。
兵庫ゴールドトロフィーでは、2015年が出走取消、16年に4着、そして17年にはあわやの2着があったが、昨年はやはり薬物問題の関連で競走除外。
昨年来の薬物問題では相当に振り回されたが、それはまったく自身の落ち度ではないだけに不運としか言いようがない。ダート
グレードのタイトルに手が届かないまま、年が明けると9歳を迎えるというのがなんとも歯がゆい。