2020年最初の重賞、
中山金杯のゲートが開いた。
2番枠から出た
ブラックスピネルが、軽く促されてハナに立った。
第7レースの落馬事故のため、
三浦皇成から
ミルコ・デムーロに急きょ乗り替わった
トリオンフも、好スタートから先行し、
ブラックスピネルから差のない2番手につけた。
「持久戦になると強いので、ポジションを取りに行って、前々で競馬ができたらいいと思っていました」と、管理する
須貝尚介調教師が振り返ったように、理想的な位置取りとなった。
ブラックスピネルが単騎逃げの形に持ち込み、1、2コーナーを回って行く。
2、3馬身離れた2番手に
トリオンフがつけ、すぐ内の3番手が
ノーブルマーズ。
タニノフランケル、
ウインイクシードらがつづく。
2番人気の
ザダルは中団の外目、1番人気の
クレッシェンドラヴは、鞍上の
内田博幸が「フワフワした感じでなかなか進んでいかなかった」と言ったように、先頭から10馬身ほど離れた後方を進んでいる。
1000m通過は1分0秒2。
ブラックスピネルが先頭のまま3、4コーナーを回り、直線へ。
デムーロの
ゴーサインを受けた
トリオンフが直線入口で
ブラックスピネルの外に並びかけ、先頭に躍り出た。
外から
ウインイクシード、内から
ノーブルマーズらが追い上げてくるが、こうしたつばぜり合いになると、須貝調教師が言っていたように、本当に強い。他馬に迫られたらそのぶんだけ自分も伸び、最後まで抜かせずにゴールを駆け抜けた。
「皇成の怪我がなければ嬉しい。馬はすごくよかった。1年ぶりの前走でいい競馬をしていたので、今回もチャンスだと思っていました。思っていたとおりの競馬ができました」
自身、昨年の
オークス以来の重賞勝ちとなったデムーロは、そう振り返った。
最後に速い脚を使いづらいトップハンデの58kgで、勝つにはこれしかない、という積極的なレースをし、2018年の
小倉大賞典、
小倉記念につづく重賞3勝目を挙げた。
母の父が2日に世を去ったダンスインザークというあたりも、ドラマチックな勝利であった。
(文:島田明宏)