昨年の
有馬記念は近年にない豪華メンバーだった上に、自分の担当厩舎だけでも6頭(角居2、友道3、音無1)が出走。加えて、打倒
アーモンドアイに燃える
リスグラシューのマークを怠ることもできない状況だった。ゆえにお伝えする機会がなかったが、実は
有馬記念に出走したときの
スティッフェリオは「キャンターに下ろしただけでデキの良さが伝わってくる」と、生野助手が言い切るくらいの素晴らしい状態。例年のメンバーレベルなら“こっそり手を出したい”くらいの雰囲気があった。
13着惨敗やん。何言うとんねん! そんな声もあるかもしれない。しかし、あの着順は“勝ちに行く競馬”をしたからこそであり、仮に色気を出さず、下がってきた馬をパスしていく“着拾い”の乗り方をしていれば、もっと上の着順を狙えた――。それが陣営の共通認識だ。
もっとも「攻めの騎乗」をした丸山を批判する気は毛頭なく、生野助手も「いい状態でGIに出走させているのだから、ジョッキーには勝ちに行ってほしい。あの
有馬記念に関しては納得のレースをしてくれたと思っています」。仮にスローだったら…は競馬の世界では言いっこなしだ。そんなこんながあってのアメリカJCCはどうなのよ? これまでの話は、そこにつなげるための単なる前フリである。
ブラストワンピースという“大物”はいるものの、
有馬記念と比較すれば二枚は落ちるメンバーで、昨秋に
オールカマーを勝った中山芝外2200メートルという舞台も絶好。単騎で行ける可能性も低くはない。それなら巻き返しは容易なんじゃないの?と思いたいところだが、あれだけのレースをした後。さすがに疲れがあったようで、今週の追い切りの感触を聞くと「悪くはないけど、抜群だった
有馬記念と比べると少し物足りないかな」と実に正直なコメントをしてくれた生野助手。ならば、この意見を今回は採用することにした。
「ちょっと決め手に欠けるところがあるが、その弱点が時計のかかる中山ならカバーできるんでしょうね。確かに
スティッフェリオと似たようなところがあるかも」と藤田助手。
スティッフェリオと同じ
ステイゴールド産駒というだけではなく、実際に中山で凡走のないのが
ステイフーリッシュ。タイプの似ている、この馬なら
スティッフェリオに代わっての
オールカマーの再現がありそうだよね? そんな記者の質問に対する答えが前述のコメントだ。
「正直、
スティッフェリオが行くことは分かっているわけだし、それを無理に制してハナを切るなんてことはないと思う。そういう意味では少し違うけど、2番手からでも脚を使い切る競馬は一緒ですからね。それで後ろに捕まるなら仕方がない」(藤田助手)
個人的には前走までコンビを組んでいた中谷&
ステイフーリッシュでの重賞制覇を切に願っていたが、競走馬は勝ってナンボなわけで、厩舎の偉大なる先輩
リスグラシューがそうだったように、初の外国人騎手騎乗で一変する
ステイフーリッシュも見てみたい気持ちがなかったわけではない。勝利から遠ざかること1年半以上。待望の3勝目があるなら、ここではないだろうか。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ