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異色の逆輸入ジョッキー藤井勘が世界で見た日本馬の血脈

デイリースポーツ
  • 2020年05月26日(火) 11時20分
 親から子へ受け継がれていく血のロマンは、競馬の魅力の一つ。競馬は世界各国で行われており、中には現地で種牡馬として活躍する日本馬もいる。そんな他国の種牡馬事情について、6カ国でレース騎乗経験を持つ藤井勘一郎騎手(36)=栗東・フリー=が経験を基に解説してくれた。

 一番長いキャリアを積んだオーストラリアでは、日本からシャトル種牡馬としてけい養されている馬が多いこともあり、なじみの血統を見かけることも多かったそう。欧州に比べて豪州で日本血統が歓迎される理由を「オーストラリアは、森を開いたところに競馬場があるヨーロッパとは違って、ある程度、日本と同じで“コース”で競馬していますからね」と説明する。古くはジャングルポケットフジキセキ、今ではモーリスミッキーアイルなどが、シャトルけい養されており、2010年、11年に高松宮記念を連覇したキンシャサノキセキは、フジキセキが豪州で残した子だ。

 シンガポールでは日本人トレーナーが活躍しているらしく、「高岡(秀行)厩舎といって、もともと道営のリーディングだったところなんです」と教えてくれた。日本の競馬ファンからすれば、シンガポール競馬はオーストラリア競馬よりもなじみが薄いかもしれないが、06年にはコスモバルクが、07年にはシャドウゲイトシンガポール・エアラインズ・インターナショナルC(G1)を制している。

 また、日本調教馬だけでなく、日本産シンガポール調教馬の活躍も目立っている。「長距離ですごく活躍したエルドラドという馬はステイゴールド産駒の日本生産馬で、ゴールドC(G1)を3勝しました」。引退後にはエルドラドの名を冠したレースが施行されるなど、シンガポール競馬に大きな影響力を与えた様子だ。他にも「ジョリーズシンジュ父ジョリーズヘイロー、4歳チャレンジ3冠馬)も日本のセリで買われた馬ですしね。あとは不思議なことに、向こうでディープ(インパクト)産駒にも乗ったことがあります」と懐かしげに振り返る。JBISで確認すると、ジョリーズシンジュは引退後、オーストラリアで繁殖入り。14年産のフォーマリティー(父ファストネットロック)が重賞4勝を挙げている。

 韓国は「種牡馬がアメリカから輸入されるパターンが8割」と話すが、ダートしかないという理由だけではないようだ。「福岡から韓国まで船で2時間。一見、日本から連れて帰る方が速いと思いますよね。でも、北海道からそこを経由して持ってくるのと、遠いけどアメリカから一気に持ってくるのでは、アメリカからの方が関税とかが安いんです」と説明してくれた。確かに…と納得させられることばかりだ。

 そして、その米国から輸入されたのが、「向こうのディープインパクトです」というメニフィー(父ハーラン)だ。昨年に死んでしまったが、産駒が韓国3冠を制覇したり、年度代表馬に複数馬が輝いたり、韓国競馬を象徴するような活躍を見せた。

 とはいえ、日本からもビワシンセイキイングランディーレテスタマッタなどが輸入されており、最近ではクリソライトが韓国に渡っている。その中でも「イングランディーレの子でチグミスンガン(コリアンダービーをV)っていうのがいて、強かったです」と舌を巻く。チグミスンガンは引退後に同国で種牡馬入り。イングランディーレの後継種牡馬となった。異国の地で、日本の血脈が広がりつつある。

 意外なことに中国でも騎乗経験を持ち、「芝コースに立派なゲートがあって衝撃的でした」と述懐する。肝心の馬はというと「オーストラリアで売れ残った馬が一線に行っています」と、意外な返答。白星も挙げられたようで、「血統を見たら豪州産の馬がいて、オーストラリアの時の感覚で乗ったら一つ勝てました。パッと行った地でも血統を見たらそういう乗り方ができますね」と、見知った血統が騎乗の大きなヒントになった様子だ。

 「血統は面白いですね」と異色の逆輸入ジョッキーは相好を崩す。「小さい頃にサンデーサイレンス産駒1期生のダンスパートナーらがいて。フジキセキで競馬が好きになりました。オーストラリアに行って、騎手になって、そしたらフジキセキの子がいて…びっくりしました。(主戦の)アブレイズの3代母リリオも、池江先生が助手時代にアメリカのセリで買ってもらった馬ですからね」。ドラマ性すら感じる血のストーリーに胸を熱くした。

 私も血統の奥深さから競馬に取りつかれた一人。今年1月に競馬担当になってもうすぐ半年。これから先、数え切れないほどのレースを取材するだろう。そのなかで少しでも心を打つような血のつながりに触れ、そしてそれをお伝えできればと思う。

(デイリースポーツ・山本裕貴)

提供:デイリースポーツ

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