今週の
安田記念(日曜=7日、東京芝1600メートル)で日本馬史上初の芝GI・8勝をかけて挑む
アーモンドアイ。ただ、
ヴィクトリアマイル直後は、たとえ
クリストフ・ルメールが「昨年のリベンジ」と口にしようとも、出走に対して当方はやや懐疑的な視線を向けていた。というのも厩舎スタッフの鈴木勝美助手から、こんな言葉を聞いたからだ。
「ずっと手綱を引っ張って回ってきた影響で、
有馬記念の数日後は草を食べたくても首が落とせないほど背中の筋肉が硬直していた。これだけダメージが蓄積した姿を見たのは初めて。回復に時間がかかることも当時は覚悟していた」
同馬における過去最短ローテは
オークス&
ジャパンC時の中41日。それが今回は半分、中20日の出走だから馬体のケアと体調の見極めは容易ではないと見ていたのだ。だからこそ…。レースから11日後の先週木曜(28日)、南ウッドで5ハロン73.1秒の数字をマークする姿を見た時、
アーモンドアイのさらなる進化を感じずにはいられなかった。
「これまでレース後に熱中症になることもあったけど、今回は何もなくてね。無観客の恩恵もあるのかな。装鞍所から気持ちに余裕があり、馬がエキサイトせず競馬も楽だった。やはり
リラックスして走ると違うね。この中間も馬体が減らず、落ち着きもあるから」
こう話すのは管理する
国枝栄調教師。追い切り2本で臨んだ前走・
ヴィクトリアマイルは“3本目の追い切り”とも呼べる楽勝劇だったが、おそらくその背景にあるのはメンタルの成熟だろう。以前はレース前に決まって高ぶり、装鞍も鼻ネジをして臨んだほど。しかし、有馬後は美浦でも淡々とした姿を見せるようになり、いい意味で気持ちが枯れてきた。
「今は爪のトラブルの不安がないし、ムキにならない分、一番のウイークポイントたる右トモにも負担がかからない」との鈴木助手の弁が伝えるのは、ようやく迎えた「心技体」すべてのかみ合いではなかろうか。
「これまでも順風満帆ってわけじゃない。
アーモンドアイは多くを乗り越える強さがあった。香港は熱が出て駄目で、有馬も駄目で、ドバイもね。それでも、ここまで持ってくるのがこの馬のすごさ。まだ上に行くかなって気がしないでもない」
指揮官のこの言葉を借りれば…。史上初をかけて臨む大一番も、新たな扉を開く進化への通過点かもしれない。
(美浦の退化野郎・山村隆司)
東京スポーツ