中央競馬の上半期を締めくくる
宝塚記念。暮れの
有馬記念とともにファン投票が行われ、それにもとづいて出走馬が決められる、ファンにとっては夢のレースである。このレースが始まって満60年、今年は61回目を迎える。過去を振り返ってみると、優勝馬にはいずれもファンが多く、歴史に名を残す馬たちが名前を連ねている。
私にとっては2011年のレースが思い出に残る。応援していた
ブエナビスタが前年2010年
アーネストリーを交して先頭に立ったと思った瞬間、大外から一気に伸びてきた
ナカヤマフェスタにアッという間に交されて2着に敗れたため、これは現地で応援しなかったからだと思い、今年こそ勝って欲しい、否、勝てると勝手に思い込んで阪神競馬場に乗り込んだのだ。
パドックの気配も良く、もう勝ったも同然と感じ、レースを観戦。予想通り、
アーネストリーが好位マークから直線、早目に先頭に立つ。後方から追い上げた
ブエナビスタがジリジリと迫ってくるがもうひとついつもの迫力がない! これはまずいと思ったら
アーネストリーが堂々の1着、ブエナは
エイシンフラッシュをハナ差上回るのがやっとで、2年連続の2着に泣いた。阪神の2200mは結構、難しいコースだと強く感じたことを思い出す。
さらに“今年はこの馬が勝つ”と思っていたら、その最有力馬が惨敗したのが2017年の
宝塚記念である。この年、
キタサンブラックは
大阪杯を勝ち、
天皇賞(春)を連覇してGI5勝となり、王者の風格を湛えていた。その勢いをもって、
宝塚記念に出走。誰もが押しも押されもせぬ最強馬と感じ、単勝1.4倍の支持を受けた。
レースではいつも通り、好位を進み、直線中程で先頭に立ったものの、ゴールに向かって加速がつかず、急激に順位を落とし、結果はなんと9着。支持したファンにとっては、まさに狐につままれた気分であっただろう。競馬は、時にこのように説明のつき難いことが起きるものである。
一転して、去年の
宝塚記念は
リスグラシューが驚くほどの強さを発揮して王座に就いた。その後の
リスグラシューの進化がさらに凄く、10月にはオーストラリアに遠征してG1
コックスプレートを圧勝。さらに暮れの
有馬記念では後方を進んで、4コーナーで大外に出すと、アッという間に他馬を置き去りにして2着に5馬身差の完勝。史上初の牝馬による
グランプリダブル制覇を達成した。この快挙で、その起点となった
宝塚記念が注目を集めることになったのだった。
(文=草野仁)
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