いったんは良馬場にまで回復した阪神の芝コースが、直前の雨でまた稍重になった。そんななか、13年ぶりのフルゲートとなった18頭がスタートした。
逃げると見られていた
アフリカンゴールドは、鞍上の藤井勘一郎が促しても今ひとつスピードに乗らず、外の
トーセンスーリヤに前に入られ、控える形に。同様に、先行すると思われていた
武豊の
キセキも、ゆっくりとしたスタートから後方で折り合う戦術を取った。
トーセンスーリヤが先頭で1コーナーを回って行く。2番手は
ワグネリアン。
ダンビュライト、
ラッキーライラック、
ブラストワンピースらがつづく。
北村友一の
クロノジェネシスは、速いスタートからスムーズにそれら好位勢の後ろにつけた。
「周りの馬は気にせず、自分の馬だけを信じて乗ればいいと思っていました。スタートが決まったことが大きかったです。折り合える位置で、終始手応えよく回ってこられました」と北村。
向正面に入っても隊列はほぼ変わらず、
トーセンスーリヤが11、2馬身になった馬群を引っ張る。
1番人気に支持された
クリストフ・ルメールの
サートゥルナーリアは、先頭から7、8馬身離れた10番手の内。
1000m通過は1分ちょうど。
3コーナーで
キセキが外からスッと進出し、中団まで押し上げた。その気配を察したように、
クロノジェネシスも加速する。
内から
トーセンスーリヤ、
ワグネリアン、
ラッキーライラック、
クロノジェネシス、
キセキがほぼ雁行状態になって4コーナーを回り、直線へ。
ラッキーライラックが一瞬先頭に立ったが、ラスト200m手前で、
クロノジェネシスが桁違いの脚で抜き去り、先頭に躍り出た。
「
ゴーサインを出したというより、馬が強くて、自然に上がって行ってしまった感じでした。この手応えで、この直線なら絶対に伸びてくれると思っていました」と北村。
そこからは独壇場。スパートするときにステッキを3発入れただけで見る見る後ろを引き離し、2着の
キセキを6馬身突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。
稍重の新馬戦と
秋華賞を2馬身差、重馬場の
京都記念を2馬身半差で完勝していた「重巧者」が、馬場適性だけではない、底力を見せつけ、2つ目のGIタイトルを手中にした。
(文:島田明宏)