今年の
高松宮記念は、無観客でのGI開催が戦後初の珍事なら、1位入線馬が降着処分を受けるのもGIではわずか4例目。まさに異例ずくめのレースとして後世まで語り継がれるに違いない。
個人的なことを言えば本命馬が不利を受けて馬券が吹っ飛ぶ被害を受けたのだが、それでも不思議と(4着降着)処分を受けた
クリノガウディーに対する悪感情は全くない。それはトレセンでの普段の取材から感じる藤沢則調教師、和田騎手の人柄の良さからくるものなのか…。
改めて今、
高松宮記念の直線シーンを見返すと不利をモロに受けた
ダイアトニックの手応えも良かったが、スピードに乗った
クリノガウディーの走りも本当に素晴らしかった。
今回話をうかがった担当の丸田助手によると、「休み明けを2回使ってだいぶ状態を上げていましたからね。本当に雰囲気はすごく良かった。ただ、常に攻め馬では動く馬なので調子の良しあしの判断が難しく、正直あそこまでやってくれるとは…という感じでしたね」と、想像を超えた頑張りに驚いた部分もあったようだ。その一方で、問題になった左へのモタれ癖に関しては首をかしげる。
「去年の
中京記念(2着)のときに森(裕)騎手からも指摘があったし、左回りだと出るのかなあ。GIの舞台でメンバーも超強力。この馬も目一杯の走りでしたから、少ししんどくなったのもあったかもしれないですね。普段の調教では特にモタれる面を見せることはないんですよ」
つまり、左回りだけではなく、初めて限界まで能力を引っ張り出したことによる“副作用”もあったのか。加えて、あの日の中京はかなりの道悪馬場。その影響もあったのかもしれない。
いずせにせよ、今年のGIII・
CBC賞(日曜=7月5日、阪神芝内1200メートル)の舞台は例年と違い、右回りの阪神芝内1200メートル。目一杯追っても前走のようなことはあるまい。
クリノガウディーは新馬戦を1800メートルで勝ったこともあり、これまでマイル〜中距離路線を使われてきたが、前進気勢が旺盛で2戦目からは折り合いに苦労することが多く、一進一退を繰り返していた。それならば“いっそ短距離に”と1200メートルの
高松宮記念を使い、ス
プリンターとしての素質が見事に花開いたというわけだ。
「母親も兄姉もみな短距離馬。ゲートも速いし、
高松宮記念でも無理せず好位が取れましたからね」と丸田助手。ス
プリンターとして“競走馬人生第2幕”を歩み始めた
クリノガウディーに対して、藤沢則調教師も「新馬戦を1800メートルで勝ったばっかりに…。なかなか適性に合った使い方ができず、今までかわいそうなことをしたよね。1200メートルだったら力は上位。若いころはトモの甘さ、体の緩さもあったが、そのあたりも古馬になって解消されました」と強い期待感を抱いている。
高松宮記念時、同時開催の阪神競馬場の検量室では、居合わせた調教師、関係者が
クリノガウディー&藤沢則調教師に大声援を送るシーンが見られたそうだ。師の人柄を感じさせるエピソードではないか。
厩舎悲願の、そして周囲も期待しているGIタイトル奪取へ向けて、
クリノガウディーにかかる期待はとにかく大きい。今回の
CBC賞を
ステップに、秋には見事、大輪の花を咲かせてほしいものである。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ