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【JDD回顧】ダノンファラオの前残りも能力差以上に着差がついた(斎藤修)

  • 2020年07月09日(木) 18時06分
 ジャパンダートダービーは、かねてから“この馬は負けないだろう”と思われた有力馬がコロッと負けてしまうことがあるレースという印象があったが、以下にその例を挙げてみる(馬名の右は、単勝オッズ、着順、勝ち馬)。

 03年 ユートピア 1.5倍-2着(ビッグウルフ)
 07年 ロングプライド 1.5倍-3着(フリオーソ)
 09年 スーニ 2.0倍-6着(テスタマッタ)
 10年 バーディバーディ 1.5倍-6着(マグニフィカ)
 14年 ハッピースプリント 1.4倍-2着(カゼノコ)

 地元大井所属のハッピースプリントはともかく、中央有力馬の敗因は、砂の状態など馬場の違いをはじめとする環境の違いが大きいのだろう。

 単勝1.1倍の圧倒的人気に支持されたカフェファラオは、ここまで無敗というだけでなく、いずれのレースでも次元の違う勝ち方を見せてきた。そもそもここ何年かで中央のダート路線の層がますます厚くなり、レベルも格段に上がった。一昨年のルヴァンスレーヴ、昨年のクリソベリルが3歳のうちから古馬相手にほとんど無敵の活躍を続けたこともあって、今年のカフェファラオは、少なくともその2頭と同じレベルか、それ以上と評価されるのも当然だった。

 カフェファラオの惨敗は、馬場の違いが要因として大きかったと思われるが、それにしても競馬はやってみないとわからない、ということをあらためて思わされた。

 D.レーン騎手は敗因として、「1コーナー手前でタイヤの跡に反応して、逆手前でコーナーに入るミスステップが響いた」こと、さらに「今まで経験したことがないキックバックにも反応してバランスがとれなかった」ことを挙げている。たしかに1コーナー手前の映像では、ガクッとつまずくような場面が確認でき、それで手前を替えるタイミングを失ってしまったのだろう。3コーナー手前までは好位3番手の内を楽に追走しているように見えたが、4コーナー手前で手応えがなくなってしまった。

 2番人気ミヤジコクオウも「馬場に尽きる。テンから最後まで追い通しで忙しかった」(幸英明騎手)という5着。

 3コーナー過ぎからは、逃げたダイメイコリーダ、2番手のダノンファラオが3番手以下を徐々に離して直線は一騎打ちとなり、ダノンファラオダイメイコリーダを振り切った。この日、ここまでのレースでも前残りのレースが多く、また道悪では前残りに加えて、着差以上に能力差が開くことがある。馬場状態の発表は重だったが、第1レースは不良で行われており、不良に近い重馬場だったのだろう。

 ダイメイコリーダが引っ張った前半1000m通過61秒3は、GI級のメンバーなら平均的なペースだが、後半は64秒6と、前後半の差が3秒3。最後の1Fは14秒2もかかっているから、前の2頭もゴール前では脚が上がっていた。湿っていてもむしろタフな馬場。それを考えると前半61秒3はかなり厳しいペースで、実際に向正面中間から後続有力勢もほとんどの鞍上の手が動いていた。バテ比べというレースになって、能力差以上に着差がつく結果となった。

 6番手を追走していたキタノオクトパスが、直線で一杯になってしまった人気2頭を交わしただけの3着で、2着ダイメイコリーダからは5馬身も離れていた。

 そうした中で、持てる能力を発揮した地方馬が、4着ブラヴール、6着エメリミットだった。

 ブラヴールの後方追走は定位置とはいえ、向正面では先頭から16〜7馬身ほども離れた最後方。4コーナーでも10番手という位置から、この馬だけと言っていい伸びを見せた。勝ち馬から8馬身半ほども離れた4着を健闘といっていいのか微妙だが、東京ダービーの除外明けで仕上がりが十分ではないと伝えられた状態ながら、京浜盃羽田盃で見せた末脚をここでも発揮した。

 エメリミット東京ダービーを勝ったときが、1000m通過62秒1というペースを好位の3、4番を追走して接戦を制し、勝ちタイムが2分6秒9(良)。今回は縦長の中団を追走して、向正面から追い通し。ペースと位置取りを考えると、この馬自身は東京ダービーと同じようなペースで走っていたと思われる。しかしそれでいて自身の走破タイムは2分8秒3と、東京ダービーより1秒4遅かった。東京ダービーより調子を落としていたということでもなければ、エメリミットのレースぶりを見ても、不良に近い重馬場がかなりタフな馬場だったことがわかる。

 勝ったダノンファラオは、伏竜S・6着、前走鳳雛S・14着という敗戦があり、「まだまだ馬は緩い」(矢作芳人調教師)というのは、そのあたりなのかもしれない。それと、中央の軽いダートより、時計のかかる地方のダートのほうが合っているという可能性はある。

 それにしても矢作調教師の大井愛はすばらしい。南関東で初めてグレードを勝った2012年JBCスプリント(川崎)のタイセイレジェンドの鞍上が内田博幸騎手で、翌年東京盃を勝ったときの鞍上も内田騎手。2016年にキョウエイギアジャパンダートダービーを制したときの鞍上は戸崎圭太騎手。また2010年に一時的に大井に移籍させて東京ダービーを勝ったマカニビスティーを管理していたのも矢作調教師だ。

 そして厩舎所属の坂井瑠星騎手は、今年4月にジャスティン東京スプリントを勝ち、今回のジャパンダートダービーでは、デビュー5年目でJpnIを勝たせることになった。

 坂井瑠星騎手の父は大井所属として2028勝(ほかに中央8勝)を挙げた坂井英光騎手。昨年12月1日付で調教師となり、現在は研修中。東京スプリントに続いて今回も、口取り写真の撮影に収まっていた。その父の研修先のひとつが矢作厩舎でもある。残念ながら中止になってしまったが、矢作厩舎の今年3月のドバイ遠征、さらに4月のオーストラリア遠征では、現地での調教を任される予定になっていたという話も聞いた。

 今回のジャパンダートダービーのレース後、「生まれ故郷ですので、大井で勝つのはいつでも良いものだなと思っています」と話していた矢作調教師は、数々の名馬を育てるだけでなく、大井出身関係者の活躍・飛躍にも貢献している。

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