あれは数か月前のこと。その週に重賞を使う馬の担当者が、某競馬週刊誌に載っている立ち写真を見ながらため息をついていた。
「トモの感じがいいころに比べるともうひとつ上がってこないんです。ほら、この写真を見ても分かるでしょ?」
どれどれ…とページをのぞいてみたが、どこがどうダメなのかよく分からない。恥を忍んで解説をお願いすると「トモがいい時は前脚が地面に対して真っすぐに下りていくんです。でも後ろが弱いとそれを支えようとして体勢がどうしても前掛かりになってしまう。今回の写真で前脚が少し斜めに下りているのは、そういうことなんです」
なるほど、言われてみれば確かに前脚の角度が馬によって微妙に違う。こんなところからも調子の良しあしが分かるんだなと普段、何げなく立ち写真を見ていた自分を反省した次第であるが、その週の重賞を勝ったのは…なんと、その担当者の馬だった。まあ、それが競馬の面白いところでもあるのだが、個人的には写真の話が間違っているとは思っていない。
それを改めて実感したのが今週の
神戸新聞杯(27日=中京芝2200メートル=3着までに10・25
菊花賞優先出走権)。某競馬週刊誌を見ていると、
マンオブスピリットの立ち写真が目に留まった。前走(ダービー16着)時より前脚の角度が真っすぐに近いように映る。これってトモの緩さが解消したってこと?
担当の間宮助手に話を聞くと「まだ緩いのは緩いんですけど、良くなってきてますよ。前のめりだった体が起きて、走りも良くなってきました。トモが緩いと逍遥馬道を歩くのも大変なんですが、しっかり歩けている。春に比べたら、今のほうが全然調子はいいですね」と、ダービー当時からもう一段、いやそれ以上のパワーアップを伝えてくれた。
「今思えば疲れもあったのかな」というダービーから、無敗の2冠馬
コントレイルとの差をどこまで詰めているのか、ここは試金石の一戦。何とか
菊花賞への切符を手にして、当方の財布が真っすぐに立つくらいの配当を演出してほしいと思っている。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ