現代競馬において「叩き台」という言葉はもはや死語である。改めてそう思わせたのが
フィエールマンを管理する
手塚貴久調教師の次なる弁だ。
「すごく具合が良かったから
オールカマー回避はすごく残念。まずは
天皇賞・秋を目指すことになったが、レース後の消耗を考えると中3週の
ジャパンCは使えないでしょうから…。タイトルにこだわるなら、当初のプランを大きく書き換えるしかないですね」
思えば、先週
スプリンターズSを制した
グランアレグリアは今季3走がすべてGI競走。
アーモンドアイに至っては
桜花賞V以降、GI以外のレースを走ったことさえない。それが意味するものは、無駄打ちを極力避ける方法論。使う以上はしっかり仕上げて勝たせる――。それが現代競馬のレースへのアプローチということだ。
フィエールマンが5歳にしてキャリア10戦にとどまる理由もそこに集約されるのだろう。
さて、今週のGII
京都大賞典(日曜=11日、京都芝外2400メートル=1着馬に
天皇賞・秋優先出走権)に出走する
グローリーヴェイズにも同様のことが言える。
フィエールマンと同期でありながら、こちらもキャリアはわずか11戦。無駄打ちを避け、たどり着いた先が昨年暮れのGI
香港ヴァーズの圧勝だった。そしてその礎の舞台となったのは、むろん11戦中6戦と半数以上の出走歴を数える京都での激闘。ご存じの通り開催終了後には約2年をかけたスタンド改修工事が決まっており、“淀の申し子”として勝負へのこだわりは相当のはずである。
「
宝塚記念(17着)の敗因はゲートと馬場に尽きるでしょう。あんな競馬になって体や気持ちの負担も心配したが、帰厩後は体の硬さに気をつけつつ、追うごとに気持ちも入ってきた。1週前に騎乗した簑島(騎手)は“まだ背腰の筋肉が少し足りないかな”と言っていたけど、それも踏まえてやってきていい上昇曲線を描いているし、動きや時計を見ればこれで変わってくるのでは」
管理する
尾関知人調教師が注視したのは前走惨敗のダメージ。精神面は実際フタを開けるまで分からないが、最もいいイメージを抱ける京都を復帰戦に選択した以上、最良の結果を求める姿勢は言葉の端々に表れている。昨年の当レースは折り合いを欠いて6着と人気を裏切ったが「その後はクロス鼻革を使用し、ハミも変更して不安はないので」とリベンジへの強い決意を表明。次走が
ジャパンCか、香港かはまだ未定だが、まずはこの一戦に全力投球の構えにあるのは確かである。
(美浦の無駄打ち野郎・山村隆司)
東京スポーツ