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【菊花賞】ロバートソンキー伊藤工真 感謝を胸に渾身騎乗誓う/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2020年10月23日(金) 18時00分
 昨夏、美浦取材班となった記者が、初めて寮以外で食事をしようと立ち寄った店で、偶然相席したのが金成厩舎の池上助手だった。それが縁となり、今では調教の見方などをレクチャーしてもらう「師匠」ともいえる存在に。そんな池上助手との食事の場で親睦を深めたのが伊藤工真騎手だ。当時はフリーながら、今年から金成厩舎所属に。記念すべきJRAの開幕レース(1月5日=中山1R)を自厩舎のオイデヤスダイジンで勝ち上がる、まさに幸先のいいスタートを切った。

「減量が取れてからは勝ち鞍、乗り鞍とも減って、厳しい状況でした。リスクを承知の上で、何か経験値として得られるものもあるのではと思い、障害にも乗せてもらうようになりました。そんな中で3年前ぐらいから、よく声をかけてくださったのが金成先生。調教で多くの馬に乗せていただき、平地、障害ともにレースでも騎乗する機会が増えた。先生から昨年の秋、厩舎所属になる話をいただいた時はとてもうれしかったですね。今は自分のことだけでなく、厩舎の成績を上げるにはどうしたらいいか、考えるようにもなりました」

 そんな伊藤騎手に、変わらず声をかけ続けたのが林調教師。2人の出会いは14年前の競馬学校時代にさかのぼる。

「僕がJRAの競馬学校で騎手候補生だった時、厩務員課程の林先生と同厩舎で約6か月間、一緒に学ぶことになり、自然と話す機会も多くなりました。先生はそのころから調教師を目指していて、いつか厩舎を持ったら、工真に声をかけると言っていただきました」

 出会いから10年。

「林先生の結婚式に参列されていた保坂(和孝)オーナーが“調教師になられた際は、これで勝利を”と林先生のために特製の勝負服を用意されていて。実際のジョッキーが着たほうがいいということになり、自分が着させていただき、その時にオーナーから“林厩舎が開業したら、この勝負服を着て、僕の馬に乗ってください”と言葉をかけていただきました」

 それは林厩舎が開業した18年に早くも現実のものに。7月福島の新馬戦で保坂オーナーのイチゴミルフィーユで見事デビュー勝ち。以後もほとんどのレースで手綱を取り、1勝クラスでも勝利を収めた。

イチゴミルフィーユのおかげで、ロバートソンキーへの声もかけてもらえたんだと思います」

 馬と人とがつなぐ縁を感じずにはいられない。

 コントレイル日本ダービーを制した前日の未勝利戦で初コンビを組んだ伊藤=ロバートソンキーは2馬身半差の快勝を飾った。

「当時は(新馬戦5着から)1年近く休んだ後だったので、まだ馬体に緩さは感じましたが、すごくいいモノを持っていると思いました」

 余裕残しの中でも次位に0秒7差をつける圧倒的な最速上がりを駆使したのだから恐れ入る。

 しかし、次走の1勝クラスでは圧倒的1番人気に支持されながらも、重馬場が影響してまさかの2着敗戦。それでも素質を疑わない陣営は、1勝クラスの身でありながら、あえて好メンバーが揃う神戸新聞杯に挑んだ。乗り替わってもおかしくない状況で再度、伊藤騎手に手綱を任せて…。

 結果は14番人気の低評価を覆す3着激走。ダービーウイークに未勝利を卒業した馬が、驚異的な成長力で実力馬たちと肩を並べ、堂々と菊花賞(日曜=25日、京都芝外3000メートル)の出走権利を獲得した。レース後、林調教師が「工真が完璧に乗ってくれた」と賛辞を惜しまなかったのは、競馬学校時代から続く信頼の証しでもあるのだろう。

 最終追い切りに騎乗した伊藤騎手は「先週もいい雰囲気でしたが、今週の反応も良かった。レースに臨む上で心配な点は何もないですね」と好感触を伝えた後、改めて決意を口にした。

菊花賞も自分に任せていただいて…。保坂オーナーと林先生に、いい結果で恩返しをしたい。今はその気持ちだけです」

 感謝を胸に渾身の騎乗を誓う伊藤騎手を記者も心から応援したい。

(美浦の追跡野郎・松井中央)

東京スポーツ

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