水曜朝に出走予定馬のコメントを出す調教師が多い中で、毎週決まって木曜追い切り後にそれを行うのが
尾関知人調教師。管理馬すべての調整過程を正確に伝えたいというきちょうめんさがそうさせるのだろう。たとえ未勝利馬でも割く時間や
スタイルは不変である(文字数に限りがあり紙面掲載はできていないが)。そして、そんな生真面目な男が珍しく気色ばむ表情を見せたのが、実は先週木曜のコメント会の終了間際だった。
「えっ!?
グローリーヴェイズは聞かなくていいの?」
すでに1週前追い切り後に囲み取材が行われたためだろう。厩舎担当のトラックマンらが遠慮した形だったが、反応した指揮官の表情は明らかに不満げ。ピリピリとした空気には“3強何するものぞ”の気概が漂った。そこで改めて午後に直撃すると…。やはりと言うべきか、野心に満ちたコメントが飛び出した。
「1週前はいつも蓑島騎手に乗ってもらうんですが“前走時とは体の使い方も気持ちの入りも全然違う”との感触でした。僕から見ても、国内最終追い切りで
アーモンドアイを寄せ付けなかったあの
香港ヴァーズ時の雰囲気が出てきたなと感じているんです」
GI初制覇となったその
香港ヴァーズは、GI4勝馬
ラッキーライラックに対して実に3馬身半差の圧勝。タイトルはわずかひとつでも、同馬を尺度にすれば価値は「5冠」にも匹敵しようか。確かに当時と同じ2400メートル戦なら“3強何するものぞ”である。
「東京を経験していないのはディスアドバンテージ。ただ、新潟で勝っているように左回りは不問だし、極端に速い上がりを要求されない今の馬場も合っています。またこの馬にとって、同じ騎手(川田)が継続で騎乗するのはデビュー以来初めてのこと。前走を見ても
スタイルは合っているし、よりイメージを強く持って挑めるはずです。何と言ってもJCの王道ローテは
京都大賞典なんですからね」
言われてみれば、
アーモンドアイも
コントレイルもなかなかの強行軍。長らく“京都の申し子”と感じていたが、ひょっとしたら“12ハロン戦の申し子”(過去の重賞3勝はすべて当距離)たる可能性も…。きちょうめんなトレーナーが描く緻密な戦略が不気味に映る。
(美浦の大雑把野郎・山村隆司)
東京スポーツ