アーモンドアイの現役時代、管理する
国枝栄調教師が好んで用いた決めゼリフが「雌雄を決する」だった。一般に動物は雄が強く雌が弱いとされており、雄と雌の区別をつける意味で、戦って優劣をつけることを指す言葉なのだが…。ご存じの通り、いまや競馬においては強い牝馬を牡馬が負かすのが困難な時代。実は“勝ったほうが雌”というシニカルなシーンを独特目線でやゆしたのである。
さて、今週の中山メイン・GIIアメリカJCC(24日=芝外2200メートル)は今季のGI戦線を占うべく好素材が集結。それこそ「雌雄を決する戦い」となりそうだ。
コントレイルとクビ差の接戦を
菊花賞で演じた
アリストテレスの1番人気は(鞍上ルメールからも)確実だろうが、他陣営がまだ“雌”のレッテルを受け付けないところにこの一戦の面白みがある。
「
コントレイルをあそこまで追い詰めた
アリストテレスの
菊花賞は、確かに上がり馬の迫力を感じたね。でも
サトノフラッグ(3着)だってベストパフォーマンスかといえばさにあらず。距離適性もそうだけど、使い込むと追い詰められてカーッとなる気性も当時は災いしたからね。右前と左後肢の状態次第で硬さが出る傾向はあるけど、ひと息入れた今回は柔らかみがあって動きもパワフル。
弥生賞を筆頭に中山は上手に走る馬だし、今後の成長曲線を思えば白旗を掲げるのは全然早いよ」
反攻の口火を切ったのは国枝厩舎の鈴木勝美助手。当時の3馬身半差は決定打にあらずと“雄”の威厳を声高にアピールする。一方で牡馬相手にも引かぬ構えを示すのが
手塚貴久調教師。送り出す
ウインマリリンは牝であっても“雌”でない?
「
フィエールマンの
有馬記念3着はショックだったよ。えっ、
サラキアに差されちゃうか…って。でも立場を変えて見てみれば、その
サラキアと
エリザベス女王杯で0秒3差だったのが
ウインマリリン(4着)。実はけっこう強いってことじゃない?
コントレイルと
デアリングタクトが接戦だった
ジャパンCを踏まえれば、明け4歳世代の牡馬とも大きな力差はないだろうし、ここも案外勝負になるのでは」
各陣営の言葉から測れば、明け4歳世代の“セカンドグループ”はまだ混沌たる力関係なのだろう。「負けたほうが雄」のオチが待ち受けても不思議はなさそうである。
(“野郎”改め美浦のジェンダーレス・山村隆司)
東京スポーツ