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アカイトリノムスメが“花の咲かない前哨戦”を選んだウラに奇跡の系譜/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2021年02月11日(木) 18時00分
 ローテが競走馬の生涯を決定づける――。最近それを強く感じたのが、1月に東京で新馬勝ちしたエクランドールの次走を手塚貴久調教師が語った時だった。

「牧場で様子を見てからだが、おそらく春は次の東京をもう1戦するだけじゃないかな」

 スローの流れを7番手から鮮やかな差し切り。傑出した瞬発力は誰にも大きな夢を抱かせる。だが、全兄フィエールマン同様、春2冠に見向きもしないのが陣営の姿勢。狙うべきは花か、実か。兄が手にした3つのGIタイトルを思えば、人の決断がサラブレッドの運命を握るのは確かである。

 さて、今週のGIIIクイーンC(土曜=13日、東京芝1600メートル)は“花の咲かない”前哨戦である。グレード制導入の86年以降、クイーンC勝利馬の桜花賞制覇は皆無。断然人気(単オッズ1・5倍)の16年メジャーエンブレムでさえ4着に終わった。ゆえに桜花賞で母子制覇がかかるアカイトリノムスメがこの舞台をなぜ選択したのか…。当方は疑問を抱かずにいられなかった。

「実が入り切らない細身の体で、まだカイ食いも安定しないからね。やはりレース間隔を空けて桜花賞に挑むのが、現状は最善策と思ったんだ」

 国枝栄調教師はサラリと答えた。だが、信じるべきはDNAの力ではないのか?新馬戦を負けて2戦目の東京・未勝利で初V。続く赤松賞を連勝の成績は3冠牝馬の母アパパネと、うり二つ。しかも2戦のV時計まで母と寸分たがわない。これぞ“奇跡の系譜”であり、普通なら同じ道(阪神JF→チューリップ賞)を歩ませるのが人情だ。消えない疑問に答えてくれたのは、番頭格の鈴木勝美助手だった。

アパパネは新馬直後の放牧で体が24キロ増えたけど、ムスメは4キロ増。総合力が武器だった母に対して、子はストライドの大きさや爆発力が売りだからね。成長曲線を含めて親子でも違いは大きいよ。でもね、マイルの性能ならサトノレイナス(阪神JF2着)に劣らないと思わせる馬。どのステップであれ、かける期待に変わりはないよ」

 実はクイーンC出走馬には、もうひとつの傾向がある。それはクロノジェネシスを筆頭に、古馬になってからGI戦線で活躍する馬が近10年でも五指に余ること。つまり“桜の花”は咲かずとも、後に大きな実がなるのである。3歳春がピークだったアパパネとは違う輝き…。ひょっとしたらムスメには、そんな未来が託されているのかもしれない。

(美浦の劣性遺伝野郎・山村隆司)

東京スポーツ

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