先日、ダート界の雄
サウンドトゥルー(船橋・
佐藤裕太厩舎)の引退が発表された。
サウンドトゥルーは、2012年10月に中央の
高木登厩舎からデビュー。
大野拓弥騎手を主戦に、2016年
チャンピオンズCや2015年
東京大賞典、2017年
JBCクラシック(大井)と、3つのGI/JpnIなどを勝ち、2016年
JRA賞最優秀ダートホース賞も受賞した。
サウンドトゥルーが船橋の
佐藤裕太厩舎にやって来たのは2018年暮れ。9歳になる頃だった。
地方所属になったこの3年間も、年齢を重ねながら存在感は示し続け、9歳で
金盃(2019年)、10歳では
金盃(2020年)と
東京記念(2020年)と、地方では3つのタイトルを獲得した。中団から早めに押し上げ長くいい脚を繰り出し、他馬を圧倒。主戦は
森泰斗騎手や
御神本訓史騎手だった。
3月12日の
船橋競馬場での調教中、5月のレースを視野に入れてまだソフトな調教段階だったそうだが、キャンター中に歩様の違和感があり、レントゲンを撮ったところ、右前脚の種子骨の骨折が判明。佐藤調教師自身は、あまりにもショックで涙が止まらなかったという。関係者の協議の結果、引退が決まった。
命にかかわるものではなかったことが不幸中の幸いで、
サウンドトゥルー自身はしっかり立って、エサも食べているという。しばらくは厩舎で治療に専念し、この後は生まれ故郷の岡田スタッドで功労馬として過ごすことが決まっているそうだ。
引退式に関しては、新型コ
ロナウイルス感染拡大防止に努める必要があることや、無観客競馬が続いていること、馬の状態面も考慮し、実施しないことが
船橋競馬場から発表されている。
中央時代から一線級で走り続けてきた馬が、主戦場を変え、11歳になってもなお輝き続けてきたことは、本当にすばらしいという言葉に尽きるだろう。
筆者は南関東競馬に来てからの
サウンドトゥルーを取材させていただいたが、関わる人たち誰しもが大人しくて賢い馬と口にする。
レースであれだけのパワフルな走りを見せるも、引き返してきて枠場に帰ってきた時にはすでにオフモード。枠場で鞍を外している時も、馬場で口取り撮影時にも、すでにどっしりと落ち着き払い、そんなオンオフの切り替えている姿にはいつも目を奪われた。これが、中央時代から一線級で百戦錬磨に戦い続けてきた、ダート界の雄の姿なんだと。
「無事に引退させてあげられなかったことは悔やまれて本当に申し訳なく思っています。ファンの多い馬なので、もっと活躍する姿を見せたかったです。
毎朝の調教パートナーとして、日本一の称号ある馬に乗せていただき名誉でした。この年齢になっても、一線級を相手に勝負して懸命に走り続けてくれました。たくさんの方たちに感動を与え続けてくれた本当にすごい馬です。
サウンドトゥルーにはありがとうございましたと、今は感謝しかありません」(佐藤調教師)。
(文=高橋華代子)
【
サウンドトゥルー】
11歳セン馬
馬主:山田弘様
生産:岡田スタッド様(新ひだか町)
血統:
父フレンチデピュティ、
母キョウエイトルース(母
父フジキセキ)
戦績:68戦13勝2着11回3着19回(主な重賞勝ち:
チャンピオンズC、
JBCクラシック、
東京大賞典、
日本テレビ盃、
金盃2度、
東京記念)