季節の移ろいは突然である。つい数週間前まで空気中に居座っていた冬の名残りは消え去り、ここ数日は夏を先取りしたかのような陽気がよく馬場を乾かしている。はっきりした春のない気候は門別では毎年のことだが、それでもやはり面食らってしまうものだ。
さて、今年の
ヒダカソウカップはフルゲートの14頭が埋まった。ただでさえ展開の激しくなりやすい内回り戦でもあり、気温の上昇と相まって、牝馬同士の争いは更に熱を帯びそうである。
クオリティスタートの3連覇なるかどうかが最大の注目ポイントであるが、成長著しい4歳馬、
ネーロルチェンテにこれを阻む可能性があると見た。
2歳時にはブロッサムカップを制すなど、この世代の牝馬の中でもトップクラスの素質を示していたが、元来の気難しさによって力を発揮できないレースも多かった。変化が見えたのは、3歳夏に
JRA札幌戦へ挑んだあと。この大敗で勝負根性に火が付いたようで、大海を知って腐らず前を向いたメンタルには尊敬の念すら覚える。今年は更に馬体もパンプアップし、まさに充実一途だ。近走内容から実力はオープン級まで達したと推測でき、先行して渋太く伸びるレースぶりは内回りを問題にしない。新世代の旗手としての走りに注目したい。
昨年と違って冬場に南関移籍を挟んだことで、やや復調に手間取った感のあった今シーズンの
クオリティスタートだが、前走で健在ぶりを印象づけた。パワフルな差し脚が持ち味で、内回りで自分から動いていける機動力も兼備する。昨年と同じように力でねじ伏せる競馬で、女王の威厳を示す構えだ。
レッドカードは牝馬同士の重賞なら得意のマイル戦で十分に巻き返しの可能性がある。以下、距離はOKの堅実派
ルナクレア、マイルなら粘りが増すはずの
バブルガムダンサーなどが上位圏内だ。斤量利のある3歳馬
スマイルミュがどこまで迫れるかにも注目したい。内回りの多頭数であり、当然、展開の紛れは頭の隅に入れておく必要がある。
(文:競馬ブック・板垣祐介)