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奇跡の回復を遂げたナムラドノヴァン 2年越しで夢舞台へ

  • 2021年05月04日(火) 15時03分
 2日に行われた天皇賞・春は、福永祐一騎手騎乗のワールドプレミアが優勝。ヒーローインタビューで鞍上が「全馬が死力を尽くしたいいレースだった」と振り返ったように、仁川の芝3200メートルで見応えのある熱戦が繰り広げられた。

 格式の高いこのレースで、個人的に注目していた馬がいた。6歳にして初めてG1に挑んだナムラドノヴァン(牡、栗東・杉山晴)だ。何せ強豪相手。実績的に11番人気の評価は妥当と言えるが、持ち味である息の長い末脚を生かし、しぶとく9着に力走した。

 担当の野坂一也助手にとっても、天皇賞は初参戦。実家が北海道の生産牧場という52歳のベテランは「伝統のある天皇賞は特別なレース。一生に一度使えるかどうかの夢舞台」と熱い思いで臨み、渾身の仕上げを施した。

 ここまでの道程は決して平たんではなかった。ドノヴァンは19年2月の箱根特別を快勝後に左前脚の屈腱炎を発症。症状は軽くはなく、約1年半の長期休養を余儀なくされた。「実は、条件クラスを連勝した後、馬主さんから『天皇賞に使ってほしい』と言われたのですが…」。期待馬の戦線離脱。無念の思いは察するに余りある。恐らく、並の馬なら即引退という状況。それでも陣営は辛抱強く、奇跡の回復を待った。

 そして20年7月のマレーシアC(8着)でカムバック。しばらく苦戦が続いたものの、徐々に実戦勘を取り戻したドノヴァンは、今年1月の万葉Sで復活V。その後も重賞初挑戦のダイヤモンドSで4着に善戦し、前哨戦の阪神大賞典でも3着に好走してみせた。

 野坂さんが秘話を教えてくれた。「阪神大賞典のレース後、目洗いへ向かう際にドノヴァンの幹細胞移植手術を執刀してくださった先生とバッタリ会ったんです。目が合うなり、思わずグータッチをしましたよ。3着に負けたんですけどね(笑)。でもお互い『ここまで復活したか』という思いを共有していますから。あれはうれしい瞬間でした」。

 一般論として、屈腱炎を患った馬は復帰後5〜6戦すると再発する可能性が高いそうだが、「既に10戦しましたからね。レースを使った後も、脚のむくみや熱感もありません」。馬の生命力はもちろんのこと、ここまで回復できたのはドノヴァンに関わったスタッフの献身的なサポートの賜物と言えるだろう。まして、遂にはオーナーが希望していた夢舞台へ。「2年越しの思いがかないました!」。戦前の野坂さんからは万感の思いが伝わってきた。

 レース結果はご存じの通り。野坂助手は「馬場が乾いて、速い時計を求められましたね。実績馬が上位を占めたことからも、現段階では力不足でした」と完敗を認めたが、その表情は実に晴れやかだった。「以前、内田(博)さんが『ドノヴァンは走りながらスタンドを見たり、馬場を見たりしてキョロキョロしてる。遊びながら、リラックスして走っているから距離が持つんだよ』と話していました。確かに、長い距離を走ったあとでもいつもケロッとしているんですよ。でも、今回は久しぶりに一生懸命走ったのか、レース後の息の入りはいつもより遅かったですね。内田さんもベストを尽くして乗ってくださった。結果には納得しています」。

 過酷なレースの後でも、ドノヴァンの脚元は「何ともありません」と仕上げ人は安どする。そうなれば、6歳でもまだまだ高みを目指せる。「1年半の休養が、成長を促す意味でいい時間になったのでしょう。休んでいた分、馬体は若々しいですからね。本当にここまで来られて感謝の気持ちしかありません。牧場や育成の方々、獣医さんの努力があって、今があります。天皇賞の結果は素直に受け止めますが、これが終わりではないですから。次の戦いへ向けて頑張ります」。人馬ともに道半ば。まだ見ぬ景色を追い求める旅路は続く。鍛練を重ね、進化した姿で来春、再び盾の舞台へ戻ってくるはずだ。

(デイリースポーツ・松浦孝司)

提供:デイリースポーツ

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