予報どおりに午後から雨が降ったが、ひとつ前のレースが行われるころには上がり、第62回宝塚記念は、青空の下、良馬場で行われることになった。

　正面スタンド前で1番ユニコーンライオンがハナに立ち、レイパパレが馬体を離して2番手につけた。

　クリストフ・ルメールが乗る1番人気のクロノジェネシスは、レイパパレから2馬身ほど後ろの3番手につけた。

「馬のコンディションはとてもよかった。パドックでは綺麗でしたし、返し馬もいい感じでした」

　これがテン乗りだったルメールはそう振り返る。

　外からキセキが上がってきてクロノジェネシスの前に出て、1コーナーへと入って行く。

　ユニコーンライオンが先頭のまま、1、2コーナーを回って行く。2番手はレイパパレ、外の3番手はキセキ。クロノジェネシスはキセキの直後の馬群のなかを抜群の手応えで進んでいる。

「道中は完璧でした。レイパパレのすぐ後ろで、すごくいい形でした」とルメール。

　1000m通過は1分0秒0。この馬場状態にしてはゆったりとした流れになった。

　3、4コーナーで、逃げるユニコーンライオンが仕掛け気味にペースを上げ、後続に脚を使わせようとする。4コーナー出口で、レイパパレ、キセキらが、外からユニコーンライオンに並びかけようとする。

　クロノジェネシスはそれらの後ろで抜け出すタイミングをはかっている。

　最後の直線。内のユニコーンライオンにレイパパレが迫るが、抜かせない。外のキセキが伸びあぐねると、その内から、進路を確保したクロノジェネシスがスパートをかける。ラスト200m手前では、前を行く2頭より2馬身ほど遅れている。しかし、ルメールが左鞭2発でゴーサインを出すと、凄まじい加速を見せ、内の2頭を並ぶ間もなくかわした。

「我慢して直線を待ちました。すごくいい脚を使ってくれた。だんだん加速して、ラスト200mは楽でした」とルメール。

　クロノジェネシスはそのまま豪快にストライドを伸ばし、2着のユニコーンライオンに2馬身半の差をつけ、史上3頭目となるグランプリ3連覇を達成した。

　流れが遅いと見るや、すっと好位につける冷静な手綱さばきで、ルメール騎手がクロノジェネシスの強さを引き出した。これがルメールにとって、初の宝塚記念勝利となった。

(文：島田明宏)