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【地方競馬】売り上げは絶好調 だからこそ公正な競馬の継続に注力を

デイリースポーツ
  • 2021年07月12日(月) 16時25分
 「地方競馬記者コラム・仕事 賭け事 独り言」

 新型コロナウイルスの猛威が収まらない。大井競馬場がある東京都には4回目の緊急事態宣言が発令され、南関東の他3競馬場がある各都市のまん延防止等重点措置も延長された。

 そんな重苦しい世相とは対照的に、競馬の売り上げはJRAも地方も相変わらずの伸びを見せている。JRAは昨年、17年ぶりに3兆円を超え、地方競馬もこれまで未達成の1兆円を射程に入れるところまできている。

 地方競馬の年間売上げは4月から翌年の3月までの年度単位で集計されているが、2020年度は前年度比130・1%の9122億円余。9000億円超えは1991年度以来29年ぶりで、その年度にマークした9862億円余がこれまでのレコードだ。

 もちろんこれに最大の貢献をしているのがネット投票で、コロナ禍による巣ごもり需要は根強い。地方競馬の昨年度の電話(ネット)投票売上げは8506億円余で、シェアは実に93・2%となっている。

 年度が替わっても引き続き好調で、地方競馬全国協会のホームページによると、今年4月は前年同月比111・1%、5月は同114・5%。このままのペースでいくと、本当に年間1兆円に届きそうな勢いだ。

 関係者の防疫に対する努力も特筆されよう。JRAは約7カ月半の無観客開催やウインズなどの営業休止を経ながら、今のところ開催自体の取り止めはなく、南関東も昨年8月末から9月にかけて、のべ5日間中止になっただけだった。

 厩舎関係者の個別の感染は散見されるものの、トレセンや競馬場など、従事者が“密”になりがちな業界で、一度もクラスターが発生していないのは見事と言うしかない。

 一方で、ファンの信頼を裏切る事象も起きた。騎手らが新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不適切に受給していた問題で、JRAは昨年4月、関係者計170人を戒告や出勤停止、厳重注意などの処分にしたと発表した。不適切受給に関しては他の公営競技でも多数発覚したが、法規上の制約があるにせよ、競馬関係者への処分が他に比べて大甘だったのは否めない。

 地方競馬でも、せっかくの上げ潮ムードに水を差す出来事が続出している。元騎手や元調教師の不正馬券購入に端を発し、その後も不祥事の発覚が続く笠松競馬は今年1月12日の開催を最後に、いまだ再開のメドが立っていない。

 また、今年4月に帯広ばんえい競馬の新馬能力検査のレース中、座り込んでしまった馬の顔面を騎手らが蹴る衝撃の映像が拡散して、大きな社会ニュースにもなった。

 さらに南関東では3月、若手騎手2人がSNS上の「オンラインサロン」のオフ会にゲストとして参加し、飲食等の提供を受けていたことが発覚。うち1人は今月5日にも、騎乗前日の自宅待機時に「インスタライブ」にコメントを投稿し、外部との連絡遮断義務に違反した。

 現実のレース自体でも首をかしげたくなる騎乗ぶりを記者席から目撃することがある。あまりにひどい?ケースでは、裁決が「騎乗法に適切を欠き競馬の公正を害した」として当該騎手を騎乗停止処分しているが、ほぼすべてのレース映像がネットで確認できるこのご時世、あっという間の拡散でそれまでの信用が一転して地に落ちることも十分あり得るだろう。

 地方競馬は東日本大震災直後の2012年度に売り上げが3314億円まで落ち込み、現在存続している競馬場のいくつかも廃止の瀬戸際まで追い込まれた。

 当時から見れば、売り上げが1兆円にも届きそうな現在は夢のようでもあるが、恩恵を受けているネットが、その特性から、いつ刃(やいば)を向けてくるか分からない。

 ファンはもちろん、社会からの信用、信頼を損ねぬよう、こういう時だからこそ、関係者はより一層気を引き締めて公正な競馬の継続に注力しなければならないし、われわれマスコミも心して日々の報道にあたるよう改めて自戒したい。(南関東地方競馬担当・関口秀之)

提供:デイリースポーツ

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