スマートフォン版へ

“純国産”の孝行娘 ナムラリコリスのさらなる活躍に期待

デイリースポーツ
  • 2021年08月10日(火) 18時30分
 7月17日に行われた函館2歳Sは、泉谷楓真騎手騎乗のナムラリコリス(牝2歳、栗東・大橋)が快勝。キャリア3戦目の若駒と、デビュー2年目の若武者が北の大地で輝きを放った。

 あれから半月。灼熱の栗東トレセンで、汗だくになりながら仕事に励む大橋勇樹調教師の姿があった。還暦を迎えてもなお、自ら馬にまたがる姿には頭が下がる思い。また、古くからの付き合いがある生産者の方々や、個人の馬主さんを大切にしている姿勢も私が尊敬するところだ。

 殊勲のナムラリコリスは、車で例えるならば純国産車。3代血統表にはアルファベットがひとつもなく、全て『カタカナ』で形成されている。このカタカナが意味するのは、一般的に「日本で競走に走った馬」ならびに「日本に繁殖で輸入された馬」であること。つまりは日本の競馬ファンにとってなじみ深い馬とも言えるが、ここまできれいにカタカナがそろうこと、またその馬が重賞を勝つことは非常に珍しい。

 大橋師に「いい血統ですね」と振ると、「渋いやろ〜」と笑顔。サンデーサイレンスの3×3のインブリードを持つが、その中にはフサイチコンコルドマンハッタンカフェマツリダゴッホら日本で活躍した名馬の名があり、母系を繋いできたナムラ一族も激シブ。ちなみに、父の母にあたるジョープシケは、渡辺栄厩舎の定年解散に伴い、新規開業した大橋厩舎へ転厩した過去があり、縁を感じさせる血統だ。

 遠方まで足を運び、幼少期から見守ってきたという芦毛馬には思い入れが深い。「ジョーカプチーノの子だから、スピードがあると思っていた。牝馬の割に体があったし、栗東に入厩したときからフットワークが良くてね。また、病気やケガもなく、順調に来られたことが大きかった」と成長ぶりに目を細める。

 生産は北海道浦河町の桑田正己牧場。20年来の付き合いがあるという大橋師にとって、この勝利は格別だ。「馬と牛がいるような、ご夫婦二人で切り盛りされている小さな牧場でね。最近は、馬から牛にシフトを変えているよう。そういうところの馬で、重賞を勝てたのはうれしいよ」。

 函館2歳Sを勝った翌週の月曜日。大橋師は函館から浦河町の桑田正己牧場へと向かった。現地に到着し、そこで目にした光景は、ものすごい数のお祝いの品。「お花とお酒で埋め尽くされていた。初めてのことで、桑田さんご夫婦も驚いてた」と満面の笑みを浮かべる。来客や電話もひっきりなしで大変だったそうだが、束の間の喜びを分かち合ったそう。「重賞を勝つということは、それだけ大変なこと。リコリスの勝利が、小さな牧場の方々にとって少しでも励みになればと思う」と感慨深げだった。

 ナムラリコリスは現在、岐阜県の山岡トレセンに放牧中。夏場に英気を養い、飛躍の秋へ向けて成長を促している。「ある程度、使うところは限られているからね。恐らくファンタジーS(11月6日・阪神、芝1400メートル)から阪神JF(12月12日・阪神、芝1600メートル)になるかな。馬体的にはもっと幅が出てくるだろうし、フワフワして幼い分、まだまだ奥があると思う。距離ももう少し持ちそうな感じがする」とさらなる進化に期待を寄せる。

 そして、リコリスの勝利は何よりも大橋師自身を奮い立たせる。「ウチの厩舎にとってはニホンピロアワーズ以来(14年東海S)の重賞勝ちだった。ウチの厩舎が、2歳の牝馬で芝の重賞を勝つイメージあるか?しかも、世代最初の2歳Sを勝ったんやで。クラシックはもちろん、桜花賞なんてなかなか出られるもんじゃない。これは新たな挑戦やな」。

 大橋厩舎の牡牝クラシック参戦は、10年菊花賞ミキノバンジョー16着)の1回のみ。2歳G1への参戦も初めてだ。リコリスには「情熱」「陽気」「元気な心」といった花言葉があるそう。自身を取り巻く全ての人たちを新たなステージへと導く才女の活躍を期待せずにはいられない。(デイリースポーツ・松浦孝司)

提供:デイリースポーツ

みんなのコメント

ニュースコメントを表示するには、『コメント非表示』のチェックを外してください。

ミュート・コメント非表示の使い方
  • 非表示をクリックし「このユーザーの投稿を常に表示しない」を選択することで特定のユーザーのコメントを非表示にすることができます。(ミュート機能)
  • ※ミュート機能により非表示となった投稿は完全に見えなくなります。このため表示件数が少なく表示される場合がございますのでご了承ください。なお、非表示にしたユーザーはマイページからご確認いただけます。
  • 『コメント非表示』にチェックを入れると、すべてのニュース記事においてコメント欄が非表示となります。
  • ※チェックを外すと再びコメント欄を見ることができます。
    ※ブラウザを切り替えた際に設定が引き継がれない場合がございます。

アクセスランキング

注目数ランキング

ニュースを探す

キーワードから探す