この秋は関西の期待馬が多いとあってか、年末まで栗東に拠点を置くことになった東の大ベテラン・横山典。
天皇賞・秋(31日=東京芝2000メートル)でコンビを組む
カイザーミノルといえば、春には1200メートルの
オーシャンS(5着)を走っていた異色派で、この古馬王道路線への参戦に至る過程の要所要所には横山典の“独特の感性”が大きく関与している。
初めてコンビを組んだのは昨秋の3勝クラス・
キタサンブラックメモリアル(東京芝1600メートル)。結果7着敗戦に横山典は「集中力が持続しないのでブリンカーを着用して距離を短くしたらどうか? 」とレース後に進言した。陣営はそのアド
バイスを受けて、次走に
斑鳩S(阪神芝内1400メートル)を選択。
荻野極の騎乗ながら、結果快勝で横山典の進言は“ズバリ的中”する形に。
そして、さらに距離を短縮して挑んだのが前出の
オーシャンSだった。結果善戦はしたものの、「1200メートルの馬ではない」との横山典の
ジャッジを受けて、再び距離を延ばす方向へ。
ダービー卿CT除外後に出走した
マイラーズC、続く
京王杯SCで連続3着と1400〜1600メートルの距離で結果を出すことで、今後の路線も固まったかに見えたが…。この2戦はいずれも
荻野極の騎乗。北出調教師いわく「典ちゃんに言わせると、もっと違う乗り方があるみたいよ」と。
横山典は
カイザーミノルのさらなる可能性を見いだしていたようで、その口ぶりは“俺が騎乗していれば勝てた”と言わんばかりだったとか。
前々走の
朱鷺S(新潟芝内1400メートル)はまさに有言実行。先行粘り込みとは一転、鮮やかな差し切りで勝利を収めると“感性の男”が次なる
ターゲットに指名したのが前走の
毎日王冠だった。
「
スプリンターズSも考えたんだけど、典ちゃんが“東京の開幕週の馬場で競馬をさせてみたい”と。それで1800メートルの
毎日王冠をあえて選択したんだ。引き揚げてきた時に“もうちょい頑張れよ”って言ってたくらいで、もっとやれる手応えがあったんだろうね」
北出調教師は0秒3差5着善戦という結果にも横山典は納得していない様子だったと話す。
「結果的にオープンに昇級後、1200〜1800メートルの距離を使って一度も掲示板を外していないのは立派だと思うよ。前走後もこたえた感じはなかったし、鞍上の感覚と馬の状態が一致したことで天皇賞を使うことになった。この距離でどんな競馬をしてくれるのか楽しみなんだ」と北出調教師は“横山典ファン”の一人として、
カイザーミノルの新たな「引き出し」を見つけてくれることを大いに期待している。
おそらく人気は皆無だろうが、横山典ならこちらの想像を絶するようなアッと驚くマジックを見せてくれることを記者もまた期待せずにはいられない。
(栗東のマジック野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ