広告営業時代の話をすると、11月は年末の大一番に向けて動き出すころだ。
有馬記念、
東京大賞典などビッグイ
ベントが目白押しの年末は文字通り書き入れ時。忘年会にも顔を出しつつ、山のような業務をこなすため寝る間を惜しんで働いていた(働かされていた?)ことを思い出すと、懐かしいような、苦々しいような複雑な気分になったりするものだ。
GIII
みやこS(7日=阪神ダート1800メートル)は
チャンピオンズCの重要な前哨戦であると同時に、
東京大賞典を目指す馬にとっても大事な
ステップ。つまり、暮れの二大決戦の行方を占う意味で要チェックな一戦となる。
秋初戦をここに定めた
オーヴェルニュは、2月の
フェブラリーSで13着大敗を喫しながらも、暮れの
チャンピオンズCではダークホース的な扱いをされることが予想される。その最たる理由は、舞台となる中京との抜群の相性にある。
逃げる
インティを早めに捕まえ、そのまま押し切った1月の
東海Sも強い競馬だったが、それ以上の圧巻シーンを披露したのが5月の
平安Sだ。道中は好位内で我慢して直線でスパーク。抜群の推進力で後続を実に6馬身引き離してみせた。1分54秒7走破はレコードのおまけつきで、「中京ダートでは
オーヴェルニュ強し――」を鮮烈に印象付けている。
となると、やはり買いはこの後の
チャンピオンズCで、阪神が舞台の
みやこSは静観が正解?いやいや、
オーヴェルニュを手掛ける梅内助手は“中京専用機”のような扱いに首を傾げている。
「たまたま重賞2戦が強い勝ち方だったから、そういうイメージになっているのかもしれないけど、左手前のほうが内に張るから、左回りのほうが実は乗りにくい馬なんですよ。以前は左回りだとラチにへばりつくくらいだったから、初めて中京を走る時(昨年3月の
名古屋城S1着)は松山ジョッキーにも注意したほど。右回りでも勝っているし、特別どちらが得意ってことはないですね」
確かに昨年暮れの
ベテルギウスSでは、のちに
帝王賞を制する
テーオーケインズを退けるなど、今回の舞台となる阪神でも3勝を挙げていることを考えれば、梅内助手の不満もうなずける。同時に、本来は決して得意ではないはずの左回りであれだけのパフォーマンスを披露する
オーヴェルニュのポテンシャルの到達点はどれほどの高みにあるのかと思わずにはいられない。
夏場は
オーヴェルニュを臨時の担当助手に任せて北海道に滞在していた梅内助手は、テレビ観戦となった
帝王賞7着について「2000メートルは微妙に長かったし、道中
クリンチャーにプレッシャーをかけ続けられる厳しい展開だったから」と意に介す様子はない。眼前に迫る
みやこSに向けて万全の態勢を整えるべく、
オーヴェルニュと二人三脚で乗り込みを続け、2週前、1週前追い切りには今回手綱を取る
和田竜二騎手に感触を確かめてもらった。「とくに先週はしっかりやってもらって、すごくいい感触をつかんでもらいました」と坂路4ハロン51.2-12.5秒の好時計をマークした調教内容にご満悦だ。
オーヴェルニュが目指す高みに“中京専用機”などといった別称は不要。まずは今週の
みやこSを勝ち切ってコース不問の強さを見せつける。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ