何かやってくれそうな気がする―。
パンサラッサの
福島記念での大逃亡劇を見て、穴党心を刺激されたのは記者だけではないだろう。その前走の1000メートル通過タイムはなんと57秒3。超の付くハイペースを押し切った無尽蔵のスタミナは、ト
リッキーな舞台・中山内回り2500メートルでも脅威となるに違いない。
「あそこまで速いとは思いませんでしたが、馬が気分良く走っていたので“邪魔しないように”というイメージで。最後まで余力がありましたし、本当に強い競馬だったと思います」
こうレースを振り返るのは前走に続いてコンビを組む
菱田裕二騎手だ。
有馬記念には
ラストインパクト(2014年7着、15年12着)以来、3度目の騎乗となる。今年でデビュー10年目。「こういうチャンスをいただけること自体がものすごくうれしいこと。馬の能力をしっかり出し切れるように頑張りたいと思っています」と感謝の気持ちを胸に大一番へと挑む。
そんな菱田騎手にとって
有馬記念は苦い思い出しかない。「2年連続で不完全燃焼のレースというのが自分の中のイメージ。ひと鞍ひと鞍、いろんな課題を持って一生懸命取り組んできましたし、この6年間で積み重なっているものはたくさんあると思うので、今自分ができることを精一杯やるレースにしたいです」と20代最後の
グランプリに懸ける思いを明かしてくれた。
昨日より今日、今日より明日と磨きをかけてきた騎乗技術。それは
パンサラッサの1週前追い切りにも現れていた。普段は坂路調整が主体で、ウッドで速い時計を出すのは実に1年9か月ぶり。「どうなることかとドキドキしていたけど、折り合って走れていた。やっぱり鞍上と手が合うんだろうね。状態も前回よりさらに良くなっているんじゃないか」と担当の池田厩務員も納得の走りを披露してくれた。
引き揚げてきた鞍上もまた「前後左右の
バランスがしっかりしていて、すごく乗りやすい。ト
リッキーと言われる中山ですが、コース形態に左右される馬ではないですから。これで馬場が渋ってくれたら最高にうれしいですね」と納得の表情を浮かべていた。
トウカイテイオー奇跡の復活、
オグリキャップ感動のラストラン…数々のドラマが生まれてきた
有馬記念。「予想合戦」では超小柄ながら頑張り続けている
メロディーレーンちゃんを波乱の主役に推したけど…。
パンサラッサ=菱田騎手による人馬初のGI制覇ってストーリーも悪くはないと思い始めていたりする。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ