今年ここまで3戦勝ち星がなく、しかも得意としていた大井の
帝王賞でも5着に敗れていた
オメガパフュームは、今回も決して楽な展開ではなかったが、それでも見事に同一GI・4連覇という国内初となる記録を達成してみせた。
スタートが心配された
オメガパフュームだが、ほぼ互角にゲートを出て、それでもやはりダッシュはつかず、行く馬を行かせて外に持ち出した。
前半置かれてしまう
オメガパフュームにとって、逃げた
キャッスルトップのペース配分は少なからず味方になった。最初の3Fを35秒2と速いペースで入り、後続を離した4、5F目で13秒台にラップを落とした。これは
ジャパンダートダービーを逃げ切ったときと同じようなペース配分。違っていたのは、今回は古馬一線級が相手だったこと。
キャッスルトップにとっては、そのまま楽に逃してもらえるほど甘い相手ではなかった。
前半縦長だった馬群が、ペースが緩んだレース中盤で一気に凝縮。2番手にいた
アナザートゥルースが
キャッスルトップに代わって先頭に立ち、前走
JBCクラシック同様好位がとれた
ミューチャリーもその直後。
オメガパフュームもここで一気に先団にとりつくことができた。その内には
クリンチャー。
キャッスルトップは一杯になって早々と後退し、3コーナーからは
アナザートゥルースを先頭に、直後で人気3頭が勝負に出るタイミングをうかがった。
4コーナーを回るところで外から一気に勝負を仕掛けた
オメガパフュームだったが、
ミューチャリーが外に膨れた煽りをくって大きく外に振られた。そこで前をとらえて抜け出しにかかった
クリンチャーだが、ダートでは一瞬の切れる脚はなく、それでも残り200mでじわじわと先頭に立つと、すぐに立て直した
オメガパフュームが並びかけ、2頭の追い比べ。最後はダートでの底力にまさる
オメガパフュームが振り切った。
4コーナーで外に振られたロスを考えれば、
オメガパフュームは1/2馬身という着差以上の強さ。表彰後のインタビューで
安田翔伍調教師が「おそらくこれが最後のレースになるのかなと思います」と話していたので、これで引退となるようだ。今、日本のダートでは
ゴールドアリュールの後継種牡馬が活躍を始めているが、
オメガパフュームは母の父が
ゴールドアリュール。そして父系が、自身も産駒もダートの短距離で大活躍した
サウスヴィグラスと同じ
エンドスウィープ系ということでは、日本のダートに合ったさまざまな条件で活躍する産駒が期待できそうだ。
一方の
クリンチャーは、4コーナーでラ
イバルが外に膨らんだことで視界がひらけたが、それでも突き抜けるまでには至らず。ダートに転向したあと僅差の2着3着が5戦続いたところなど、
トップレベルのダートでは最後のひと押しに欠ける印象だ。
縦長の展開になっても最後方からという、今回も自分のレースを貫いたのが
ウェスタールンド。4コーナーでもまだ13番手という位置から大外を追い込み、レースの上り3Fが37秒3のところ36秒7という脚を使い、昨年と同じ3着。9歳でもまだまだ元気で、勝ち切るにはペースや展開次第といえそう。
地方期待の
ミューチャリーは、直線を向いての追い比べに屈し、
ウェスタールンドにもハナ差交わされての4着。4歳以降、ダートGI/JpnIでの4着はこれで4回目、5着も2回あり、中央のトップクラスを相手に安定して勝ち負けするには、もう一段階のパワーアップがほしいところ。
ロードブレスは、3コーナーで凝縮した先行集団のうしろ。直線でも伸びてはいたが、前と脚色が一緒になってしまった。唯一のダート
グレード勝ちが、前が競り合ってハイペースとなった昨年の
日本テレビ盃で、その後、2着3着が計5回あるように、この馬も一線級相手に勝ち切るには展開の助けが必要。