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【日経新春杯】「乗りやすい」のが強みのモズナガレボシは“持っている馬”です/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2022年01月12日(水) 18時01分
 オートバイレースの世界では、日本グランプリに使われるような最先端のバイクをマスコミ向けに試乗させてくれる機会があるそうですね。300キロ以上も出るバイクに素人が乗って大丈夫なの? 私はそう思ったのですが…。

「いやいや、そのへんのコンビニにも乗って行きたくなるくらい、めちゃくちゃ乗りやすいらしいんだよ。知り合いに聞いたんだ」

 教えてくれたのは荒川厩舎の佐藤助手。そしてこうも続けます。

「やっぱり一流のものっていうのは誰が乗っても分かるものなんじゃないかな。もちろんスピードは出せないけどさ。それは競走馬も同じ。馬を指して“俺にしか乗れない”なんていうのは、決して腕自慢にはならず、むしろ馬づくりを間違えているっていう恥ずかしいことだと思う」

 競走馬における乗りやすさ=人間の指示に応えてくれるということだとすれば、つまり人を信頼している証しでもあります。競馬は人馬が一体となることで初めて成立するスポーツ。操縦性の高さが持って生まれた才能を凌駕する…とまでは言わないけれど、レースに行って相当強みになるのは確かかも。

 そういう意味で乗る人誰もが口を揃えて「乗りやすくていい馬」だと評価するモズナガレボシは競走馬として“一流”であると思うのです。

 6番人気だった昨年の小倉記念で見せた直線一気のごぼう抜きには度肝を抜かれたファンも多いと思います。グランプリボス産駒の稼ぎ頭で、産駒として初めてJRAの重賞タイトルを取った馬。でも、ここまでの道のりは決して“エリートコース”と言えるものではありませんでした。

「デビュー時は手先も頭も重たい感じで走る馬で全くキレがなかった。それでダートからデビューさせ、使いながら良くなって2着には5回もきたんだけど、結局最後の未勝利まで勝ち切れなかったんだ」

 皆さんもご存じの通り近年の中央競馬は夏とともに3歳未勝利戦が終わります。それまでに勝てなかった馬はいったん地方に移籍するか、除外になる可能性の高い1勝クラスに格上挑戦して使っていくかのどちらかになる場合がほとんど。モズナガレボシは後者を選びました。

「夏を越して良くなっていたのは確かで、乗り心地が古馬らしくなってきたタイミングだった。それでも格上の初芝は未知数すぎて、厩舎でもちょっと厳しいかなってみんな言ってたんだけど…」

 上位には離されたとはいえ、主戦場だったダートの中距離から条件をガラッと替えた札幌のルスツ特別(芝2600メートル)で5着に食い込んできたモズナガレボシ。ここで次走の優先出走権を取ったことで「この馬の運命が変わった」と佐藤助手は言います。

「うちの厩舎は攻め馬がそうキツくない代わりにレースを使って使って良くなっていく馬がいる。(12年の)阪神大賞典を勝ったギュスターヴクライなんかもそう。ナガレボシも芝2戦目は3連闘で迎えたわけだけど疲れはなく、むしろメキメキ良くなっていたんだ」

 2戦目で3着とメドをつけたモズナガレボシはその後、怒とうの3連勝を挙げ、首の皮一枚で中央に残った馬とは思えない活躍を見せます。3勝クラスで“善戦マン”だったため小倉記念の人気は相応の評価だったのでしょうが、それにしてはあまりの強さでしたよね。

「馬場とか展開とか、いろいろかみ合ってのものだったとは思うけど、終わったあと松山君が“ものすごく乗りやすいからやりたいレースができます”と言ってくれた。やっぱりこの馬の強みはそこだなと改めて思ったよ」

 2000メートルのチャレンジCではキレる馬に負けてしまったけれど、松山騎手からレース後すぐに「距離を延ばしてみてほしい」と進言があったそう。

「確かに今回の条件ならナガレボシの強みである操縦性の高さがより生かせそう。この厳しい世界で崖っぷちからオープン馬になれるなんて、絶対に“持っている”馬だよ」(佐藤助手)

 超良血や実績上位のメンバーが揃った今年の日経新春杯(16日、中京2200メートル)で、崖っぷちから一流となったモズナガレボシがどんなレースを見せてくれるのか…。“新春”にふさわしいエンターテインメントのカギを握る馬であることは間違いないと思うのです。

(栗東の転トレ記者・赤城真理子)

東京スポーツ

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