発光して見えるほどの白毛馬
ソダシや、子馬のように小さな体の
メロディーレーンなど、“突出した特徴”を持った競走馬は唯一無二のキャラ人気を集めます。個人的にはそれを「
ミーハー」と表現するのは好きではありません。いろんな方向から競馬を応援する方がいていいと思うし、たとえ入り口が見た目でも、心から応援したいと思える何かがあったり、馬自身の実力も伴っているからこそ、一時的ではない声援が送り続けられるのだと思うからです。
モズゴールドバレルも他にはない特徴を持った一頭。父オプティマイザーの産駒は
JRAの現役に彼女しかいません。オプティマイザーは米国の芝G3を3勝しており、G1では勝ち星こそないものの、
マンハッタンHとターフクラシックSで2着。現在は「カルメットファーム」の名で馬主と競走馬生産を行っているブラッド・
ケリー氏が「ブルー
グラスホール社」時代に初めて自家生産馬で重賞を勝ったのが彼でした。ミスタープロ
スペクター、スマートス
トライク、イングリッシュチャンネルに連なる米国の超一流父系。それに加えて母スイータース
ティルは英2000ギニーの覇者カメコを出しているのですから、競馬ファンの皆さんにとってはものすごく魅力的な血統馬ですよね。
「産駒の傾向データがないだけに、どういう成長曲線を描いてくのかとかは完全に未知数。でも、この子自身はまだまだ成長途上の段階で、相当に奥があると思います」
モズゴールドバレルについてそう話すのは攻め専の仲田雅興助手。元ジョッキーさんです。
「初めて乗ったときの印象は“手先が軽い馬だなあ”と。走りもすごく軽くて、速く走らせるほど良さが分かる。まだ小さくて力が付き切っていない段階でこれなので、パワーが付いてくれば、どんな馬になるんだろうってワクワクします」
軽い走りをする彼女の新馬戦は、内側が傷んで悪くなっていた中京の芝1400メートル。レースを見ていた仲田助手は「1枠1番で悪いところを通らざるを得ず、ノメっていたので“キツイな”と思ったんです。でも、最後に前が開いたらすごい脚で抜け出してきた。あれだけノメって、よく抜け出してきたなって」と振り返ります。
「そのまま逃げられるくらいの
ロケットスタートを決めながらも、あえて控えて馬込みに入れさせ、馬の後ろで我慢させていた。(坂井)瑠星は先々のことも考えて競馬を教える乗り方をしてくれたんだと思うけど、それに馬が応えて勝ち切るんですからね。期待以上でした」と仲田助手も驚きの強さだったようです。
次走予定の
フェアリーSを除外された
モズゴールドバレル。1週待って自己条件(
菜の花賞)に出走する手もあったと思いますが、あえて牡馬相手となる
シンザン記念に再投票しました。結果は0秒5差6着でも、外枠からの果敢な積極策でラスト1ハロン過ぎまで勝ち馬に食らいついた競馬ぶりは拍手もの。着順以上に強い競馬だったのでは?
「僕もそう思います。終始外々を回らされましたし、内枠なら結果も違ったと思いますが、それは言っても仕方ないですからね。なにせ牡馬相手に正攻法で挑んで、牝馬では最先着したんですから。新馬戦同様、スタートセンスの良さを見せてくれて、やはりこの子は素晴らしい能力があると再認識させてくれたレースでした」
そう、これは「展開が向いての0秒5差」でも、「狡猾に乗っての0秒5差」でもない。キャリア1戦の成長途上の牝馬が「まともにぶつかっていっての0秒5差」。レース中に見せていた負けん気を見る限り、
モズゴールドバレルなら、きっとこの経験を糧にしてくれると思うのです。
日本競馬にただ1頭の血を持つ彼女がスター街道を駆け上がっていくことを願ってやみません。
(赤城真理子)
東京スポーツ