アイオライトが序盤からハナに立ち、差なく
イッツクールがつづく。向正面で16頭の馬群は15馬身ほどの縦長になった。
先行する2頭から2、3馬身離れた3番手に
サンライズホープ、連覇がかかる1番人気の
オーヴェルニュは4番手の外目につけている。
松田大作が乗る7番人気の
スワーヴアラミスは中団馬群のなか。ゲートを出てすぐ出鞭を入れてポジションを取りに行ったのだが、外から被せられるような形になると、無理せず控える形に切り替えた。結果的に、これが奏功した。道中、ともすれば掛かりそうなほどの手応えでありながら、前に馬を置くことによって折り合いをつけ、脚を溜めることができた。松田は言う。
「いつも、砂を被ると進んで行きにくいところがあるのですが、前回くらいから砂を被っても平気な感じになってきたので、幅がひろがったと思います」
3、4コーナーですぐ前にいた
ケンシンコウも下がることなく伸びつづけたことにより、
スワーヴアラミスの進路が確保され、スムースに押し上げることができた。
前が開きさえすれば突き抜けるだけの手応えを感じていたからだろう、直線入口で、松田は
スワーヴアラミスを外に持ち出した。
ラスト400mを通過したところで、
スワーヴアラミスの前が完全にひらけた。
ラスト300m付近で、内から
オーヴェルニュが先頭に立った。
サンライズホープがそれを追う。
これら2頭から
スワーヴアラミスはまだ5馬身ほど後ろにいる。
ラスト200mを切ると、
オーヴェルニュと
サンライズホープが併せ馬の形で抜け出し、後ろを突き放しにかかる。
これら2頭をとらえるべく、馬場の真ん中から
ブルベアイリーデが差を詰める。そのさらに外から、松田の左ステッキを受けた
スワーヴアラミスが飛ぶように伸びてくる。
スワーヴアラミスは内の
ブルベアイリーデを並ぶ間もなくかわし、ゴールまでラスト2完歩ほどのところで、粘り込みをはかる
オーヴェルニュをとらえ、重賞3勝目をマークした。
まさに、前が止まって見えるほどの瞬発力を、松田が見事に引き出した。
「馬が去年の夏から1戦ごとに成長しているのを感じました。ぼくにとって初めてのGIIだったので、あの馬と一緒に達成できて、すごく嬉しいです。こういう形でレースをできたのは収穫だと思います」
そう話した松田は、この馬が3歳だった2018年に5戦、20年にも1戦で騎乗している。そして、昨年の
マーチステークスからこのレースを含め9戦連続手綱をとり、
フェブラリーステークスの優先出走権をつかみ取った。
松田は、17年に半年間の騎乗停止から復帰したとき「明らかに変わった姿を見せなければならない」と話していたが、間違いなく、それができている。楽しみなコンビが現れた。
(文:島田明宏)