3枠5番の
パンサラッサが好スタートを切り、鞍上の
吉田豊に促されてハナに立った。
「(
矢作芳人)先生と話したとき、この馬の競馬をしてくれと言われました。逃げて、後ろの馬に脚を使わせるよう、ペースを落とさなくてもいい、と。ほかにも行きたい馬がいましたから、思い切ってちょっと出して、あとは馬のペースで行きました」と吉田。
スタンド前でハナを取り切ってからスムーズに内埒沿いに誘導し、1コーナーへと入って行く。
外から
トーラスジェミニ、
ワールドリバイバルらが並びかけようとしてきたが、
パンサラッサは譲らず、1馬身ほどのリードを保ったまま2コーナーを回って行く。
トーラスジェミニや
ワールドリバイバルが
パンサラッサを抜くこともできそうに見えたが、2頭とも無理にハナを奪おうとはしない。
向正面に入ると、馬群は、先頭から最後方まで15馬身ほどの縦長になった。
快調に先頭を走る
パンサラッサは、ここから後ろとの差を少しずつひろげて行く。
「1、2コーナーで遅くすることもできたのですが、もう自分のペースで行こうと思い、みんなに脚を使わせるようにしました」と吉田。
2番手の
トーラスジェミニとの差を3馬身ほどにひろげ、前半800mを46秒3で通過。その差を保ったまま1000mを57秒6で通過し、3コーナーを回って行く。
ラスト600m地点で2番手との差を4、5馬身にひろげ、その差をキープしたまま最後の直線へ。
「リードがあったので、大丈夫だと思いました」と吉田。
ラスト200mを切っても2番手以降とは5馬身ほどの差があった。
吉田がターフビジョンで後ろとの差を確かめながら右ステッキで叱咤する。
パンサラッサはそのまま悠々とス
トライドを伸ばし、追い込んできた2着の
カラテに2馬身半の差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。吉田はこう振り返る
「強かったですね。前に乗ったときより、返し馬しっかりしていると思いましたし、ゲートのなかでもおとなしく、精神的な成長を感じました。自分の競馬ができると本当に強いので、これからもこういう競馬ができて、もっと強い馬に勝てるようになってくれたらいいなと思います」
ハイペースで逃げて後続に脚を使わせ、最後に自分も鋭く伸びるという、
サイレンススズカや
キタサンブラックが見せたような「最強」の形で重賞2勝目をもぎ取った。
迷いのない吉田の騎乗も見事だった。
2着の
カラテは末脚勝負に徹し、自身の武器を生かし切った。3着の
アドマイヤハダルは、早めに動いて勝ちに行く競馬をしたが、及ばなかった。
1番人気の
ダノンザキッドは、出遅れも響いたが、それ以上に、距離がこたえたのではないか。現状では、よさが生きるのはマイルまでなのかもしれない。
(文:島田明宏)