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【地方競馬】佐賀競馬を盛り上げる競馬一族“真島一家”の「うまてなし」

  • 2022年04月22日(金) 17時00分
 佐賀市から鳥栖市に移転して50周年の佐賀競馬場。競馬場が一体となって佐賀独自の「うまてなし」を行っており、netkeibaでは「うまてなし」をしている人々をご紹介。

 第2回は真島一家です。2017年JBCレディスクラシックを制したララベルに騎乗した真島大輔騎手(大井)の生家であり、父・真島元徳調教師は元騎手で、調教師として地方通算2200勝以上を挙げる佐賀を代表する調教師。叔父の真島正徳調教師も昨年11月までの騎手生活で地方通算2500勝、そして弟の真島二也調教師補佐は父の厩舎で強い馬づくりに励んでいます。

 大輔騎手の勝負服のデザインは父から受け継いだもの。ジャンパーなどのグッズを作っては佐賀の実家に送り、一家はそれを着て仕事をするなど真島一家には強い絆があります。

(取材・構成:大恵陽子)

◆大輔騎手を大成させるため――調教師も一緒にサウナで汗取り◆

――まずは真島一家の家系図を教えてください。

元徳師 私の10歳下の弟が元騎手で昨年12月に調教師になった正徳、長男は大井競馬で騎手をやっている大輔で、次男の二也は私の厩舎で調教師補佐をしています。私は若い頃、騎手をしていました。

正徳師 兄が大観衆の前で乗っている姿を見て、ジョッキーになりたいと思いました。勉強も苦手だったし。

元徳師 弟がそう言ってきた時、「競艇選手になれ」って言ったんですよ。妹が当時、競艇選手だったんですけど、私と同じくらい稼いでいましたからね。

正徳師 いや、なれって言っても、あっちは試験が難しいもん(苦笑)。騎手になったばかりの頃、兄には助けてもらいました。全然勝てずにいた時、「辞めるなら辞める、やるならやるでハッキリせい!」と言われて、そこからは調教の段階から全力で取り組みました。兄もサポートしてくれました。

――兄弟愛ですね。元徳師は弟さんがデビューした6年半後に厩舎を開業したんですね。

元徳師 自分の思うような馬づくりをしたいという思いが強まってきて、調教師になりました。開業して4〜5年は家族経営で、厩務員が帰った後も家族で厩舎作業をやっていましたね。

二也補佐 僕が幼稚園の頃かな?全然覚えていないです。

元徳師 長女と長男は学校に行く前に水汲みやカイバ桶を洗っていたよ。嫁さんからは「私たちは結構コキ使われた」って言われる(笑)。

――そのご長男というのが、2017年JBCレディスクラシックララベルで制するなど活躍する真島大輔騎手(大井)ですね。

元徳師 デビューして1〜2年後に体重がかなり重たくなったみたいで、レースには乗せられないけど、うちで預かる許可は出たので「ちょっと帰ってこいや」と帰省させました。私も騎手を引退してかなり経っていたけど、「俺がやるように一緒にせえ」と言って、食事の仕方、汗取りのやり方などを教えました。

――元徳師もかなり痩せたのではないですか?

元徳師 キツかったよ(笑)。佐賀競馬場の調整ルームのサウナを借りて、一緒に汗取りもしました。息子を大成させたくて、周りもバックアップしてくれました。佐賀競馬の主催者にも協力してもらいましたね。

二也補佐 僕が小学6年生くらいかな?

――二也補佐は兄・大輔騎手の姿を見て騎手になろうとは思わなかったですか?

二也補佐 いえ、小さい時に馬から落ちて以来、野球ばかりやっていて騎手なんて全く考えたこともなかったです。それが、中学生くらいの時に厩舎スタッフの方に一度馬に乗せてもらって、徐々にまた馬に触るようになりました。

元徳師 馬に興味を持ちはじめた頃、野球をしていて筋肉がモリモリだったので、騎手は無理だしどうしたらいいかと親なりに考えて、北海道の静内農業高校に行ったらどうか、と話しました。

――サラブレッドを生産してセリに上場させている高校ですね。

二也補佐 僕はセリは担当しませんでしたが、卒業後に日本大学に進学して馬術部に入りました。

元徳師 夢は大きかったんです。でもね、ちょうど息子が日大に入った時、佐賀競馬の売り上げが一番悪い時でさ。卒業させたかったけど、親も途中で挫折しました。

二也補佐 3年目に中退して、東日本大震災の数日後、馬運車に乗って佐賀に帰ってきました。

元徳師 競走馬を育てる根本には馬術があります。私は騎手からの叩き上げで、馬術をせずに競馬の世界に飛び込みましたが、年を重ねるごとに基本となる馬術を知らないと、馬が良くなっていかないと感じてきました。

 それで息子には「将来、競馬の世界で生きるなら、馬術をした方がいい」と、その世界に行かせました。

二也補佐 大学は中途半端に辞めて帰ってきましたけど、馬術の応用で使える部分はいっぱいあります。

◆「寝床って意外と大切なの」厩舎のこだわり◆

――厩舎としてどんな馬づくりを目指していますか?

元徳師 基本は、丈夫で走る馬。1頭1頭、能力も癖も違うので、どうやったらレースで最大限の能力を出せるようになるか、日々考えています。それとね、寝床って意外と大切なの。

――そういえば、馬房前には寝藁がたくさん積まれていますね。

元徳師 この後、馬房に敷く用です。馬房はトレーニングの疲れを癒すところですからね。

――弟の正徳師は厩舎開業から2カ月が経ちました。改めて兄・元徳師のすごさはどこに感じますか?

正徳師 全部です。何でも知っていてすごいなって思います。

――厩舎初勝利のウィシュワールドは兄・元徳厩舎からの移籍馬でしたね。

元徳師 1年目からいい成績を残すと、知らない馬主さんからも声をかけていただけたりするので、親心で勝てそうな馬を移籍させました。でも、弟にしたらプレッシャーだったかな?とか、一から自分でした方が楽だったんじゃないかな?とかいろいろ考えました。勝ってホッとしました。

 何十年って調教師をしているけど、勝てそうな馬のレースはちょっと緊張するもんね。

正徳師 周りの調教師からも「緊張するやろ?」って言われたけど、私は意外とそこまでではなかったです。騎手と違って、馬を送り出したらあとは任せるしかないと割り切っていました。

――正徳師のいまの目標は?

正徳師 大きな目標では、他地区で重賞を勝ちたいというのがありますけど、今は一人前になることだけを考えています。

――最後に真島家の「うまてなし」を教えてください。

元徳師 私と弟は、お客さんを魅せる馬づくりを一生懸命すること。息子は息子で、それをサポートする。そうして自分の仕事を全うして、佐賀競馬場を盛り上げることですね。

正徳師 人と人との絆も大切ですね。信頼関係。

二也補佐 この仕事は一人じゃできないですよね。

* * * * * * *

佐賀競馬場では4月24日に重賞・佐賀スプリングカップ(ダート1800m)が行われます。創設から5回目を迎える古馬重賞で、キングプライド(2018、20年)やグレイトパールパイロキネシストなど佐賀を代表する馬が制したレース。ぜひご注目ください。

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