競馬において勝ち馬は(まれな同着のケースを除けば)1頭のみ。レース後には明暗ハッキリ分かれる勝負の世界にあって、歓喜に沸く勝者のそばには常に多くの敗者が存在し、その経験を次へと生かすべくレースを振り返って敗因を探る姿が見られる。
収穫の認められる敗戦となれば、将来へ向けての展望は開けていく。それに馬の成長がマッチしていくような調整法を見いだすべく、敗れた者たちが日々精進を重ねた末に栄冠をつかむ姿を、これまで何度も目にしてきた。
では
アンドヴァラナウトの前走、
阪神牝馬S2着の結果はどう捉えるべきか。
ローズS優勝、
秋華賞3着と2000メートルで結果を出してきた馬が、久しぶりの1600メートル参戦、しかも休み明けの一戦であったことも加味すれば上々の結果?
レース前に
池添学調教師は「上手な競馬ができる馬なので、3歳同士のレースでは2000メートルにも対応してくれていましたが、
愛知杯(11着)では少し力みが強くなっていたことからみても、本質的にはワンターンの1600〜1800メートルあたりの条件に適性があると思うんです」と。
その言葉通り、ワンターン&マイルの条件に適性を示した2着となれば当然、陣営も納得のレースかと思いきや、レースを振り返る師が、まず口にしたのは意外にも…。
「直線での走りは苦しがっているというか、上ずった感じで、この馬本来のものではありませんでした。その分、最後に伸びを欠いたんでしょう。
返し馬から脚さばきが硬く映ったので、それが影響したところもあると思います。そのあたりはジョッキー(福永)にも指摘を受けましたし、いい状態でレースへ出走させられなかった結果だと思います」
直前の追い切りで坂路4ハロン51.9-11.9秒秒の好時計をマークし、“重賞勝ちの良血馬が万全の仕上がり”とアオったことで1番人気にまで押し上げてしまったこちら側が恥ずかしくなるほど、調整法に間違いがあったことを隠さない、反省の弁であった。
それでは前走2着の経験から何を見いだし、さらにメンバーの強くなるGI
ヴィクトリアマイル(15日=東京芝1600メートル)へ向けてどのような対策を講じてきたのか。
賢明なファンの方々であればすでにお気付きのことかと思われるが、最終追い切りでマークした時計は坂路4ハロン56.1-12.5秒を馬なりと、失敗の認められた前走時とは明らかに違ったソフト調整。
この中間の調教欄、時計の出し方を単純な数値として測れば、「仕上がり状態に?」のつくものであっても、これが現状の
アンドヴァラナウトにとってベストであり、メイチの調整であることは伝えておきたい。
今週の追い切りを終えたトレーナーは「やればいくらでも時計は速くなる馬ですが、できるだけやり過ぎないように追い切りを行いました。この中間の気配からすれば、前走とは違った好状態でGIへ向かえると思います。
ワンターン、マイルの条件が合うという見方は変わっていませんし、この馬本来の走りができれば楽しみはあります」と期待の口ぶり。
前走の敗戦を糧として即座に調整法を変えてきた
アンドヴァラナウトが、GIの舞台でどのような走りを見せてくれるのか、今から楽しみでならない。
(栗東のバーン野郎・石川吉行)
東京スポーツ