「
シャフリヤールが初めての海外でしっかりパフォーマンスを出せたのは、
ヴァンドギャルドの存在が大きかった」
管理馬2頭でのドバイ遠征を振り返る藤原調教師はこう言葉を続けた。
「人間でもそうやろ。海外に1人で行くのと、2人で行くのでは、気持ちがまったく違う」
慣れない環境に戸惑い、馬がナーバスになってもおかしくない海外遠征。以前はテンション面に課題を抱えていた
ヴァンドギャルドが、異国の地で後輩
シャフリヤールをしっかりアテンド。
ドバイシーマクラシックの勝利に貢献したというのだから、精神面の成長を実感せずにはいられない。
「一度行けば違ってくる。人と一緒で馬も自信がつくからな。いろいろ経験を積みながら、ホント馬は良くなっている」
近3戦は米国→香港→ドバイと世界各地を転戦。香港16連勝のゴールデンシックスティや
ドバイターフ連覇のロードノースなど強敵相手にモマれてきた。特に前走の
ドバイターフは直線で目の覚めるような脚を使ってハナ差の銅メダル。昨年(3馬身差2着)から着順的には後退したとはいえ、時計、着差を大きく詰めて地力強化を示した。
成長の跡はローテーションにも表れている。ドバイから帰国後、約半年の間隔を空け
毎日王冠からの復帰となった昨年に対して、今年はそれより4か月も早い
安田記念(5日、東京芝1600メートル)へ。これだけでも中間の回復がいかに早かったかの証明となろう。
中身が充実してくれば、気持ちにも余裕が出てくる。「以前に乗っていた時よりも、落ち着きが出ていますね。精神面の成長を感じますし、雰囲気はすごくいいと思います」とは一昨年の
安田記念(10着)以来のコンビとなる岩田望。以前は普段の調教でパシ
ファイアーを着用していたが、「今は着けていません」。それだけ馬が大人になったのだろう。
かつてはそのテンションの高さから、競馬前にエネルギーを消費してしまうことが多かった
ヴァンドギャルド。しかし、タフな環境でモマれてきた今なら、その不安を払拭するだけの期待が持てる。「試行錯誤はもうやめた。馬を信じるだけ」とは藤原調教師だ。
海外遠征の連続でひと皮むけた
ヴァンドギャルド。それは長期熟成しておいしくなったワインのごとし。久々の日本でどんな走りを披露するのか、注目せずにはいられない。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ