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【歴史に残る名勝負】地方と中央の「意地」と「誇り」が激突/2006年帝王賞

  • 2022年06月27日(月) 13時45分
 上半期ダート路線の頂上決戦として知られる帝王賞(JpnI)。1995年にダート交流重賞となって以降、長い歴史のなかで幾多の名勝負が生まれてきた。今回は過去の帝王賞から、地方・中央の意地と誇りがぶつかりあった一戦をピックアップして振り返ってみたい。

 2006年6月28日。大器晩成を地で行く遅咲きの猛者タイムパラドックスや、後にJpnIを2勝するボンネビルレコード、交流重賞で活躍する古豪サイレントディールなど、強豪が集っていたが、ファンの注目は2頭に集中していた。

 単勝1番人気は名伯楽・角居勝彦調教師が管理するJRA所属馬カネヒキリ。前年11月にジャパンカップダート(GI)を制し、続いてフェブラリーS(GI)を3馬身差で快勝していた。当時のダート界の王座に君臨しており、JRA開催で地方の雄アジュディミツオーに3度先着を果たしていた。残すはアジュディミツオーをアウェイである南関東の舞台で負かすのみ。鞍上はリーディング快走中の武豊騎手が務めた。

 迎え撃つのは2年前の東京ダービー馬、船橋・川島正行厩舎のアジュディミツオー。南関東の大エースへ成長したこちらが2番人気。川崎記念マイルグランプリかしわ記念と南関東の重賞を3連勝し、地方競馬の大将格に相応しい成績をひっさげて帝王賞へ駒を進めてきた。鞍上は、この年に日本記録となる524勝を挙げる内田博幸騎手

 単勝オッズはカネヒキリが1.6倍、アジュディミツオーが2.2倍。2頭の馬複は何と1.6倍。3番人気のマイネルボウノットは14.7倍と大きく離されたオッズ。馬・厩舎・騎手、それぞれがトップレベルの2頭が対決するとあって、やはりファンの注目は2強対決の行方――この1点に注がれていたということだろう。

 20時10分。戦いの火蓋が切って落とされると、内田騎手が軽く促しアジュディミツオーがハナを切る。一方のカネヒキリ武豊騎手がガッチリ抑えて3番手のインコースへ。アジュディミツオーの背中を見る位置に付けた。

 600m通過が36.3秒、1000m通過は60.9秒。ハイペース過ぎず、スロー過ぎず、他馬にプレッシャーを与え続ける絶妙な逃げ。アジュディミツオーと内田騎手は後続のスタミナを少しずつ削いでいく。

 3コーナー手前、アジュディミツオーの外に付けていたケージーチカラマイネルボウノットが後退し進路が開くとカネヒキリが追撃を開始、じわりじわりと忍び寄っていく、そこからは両雄2頭の熾烈なマッチレースとなった。4コーナー手前で武豊騎手は仕掛けてカネヒキリが差を詰めるが、内田騎手は慌てず騒がず、まだ手を動かさない。

 直線、残り300m。アジュディミツオーカネヒキリの差が1馬身差に詰まると、内田騎手が「今だ!」と云わんばかりに手綱を動かす。一方の武豊騎手も激しく鞭を入れカネヒキリを必死に鼓舞し、壮絶なデッドヒートを演じる。

 この2頭2名の叩き合いは実況アナウンサーが「勝ちたい内田!負けられない武豊!」と表現するほど激しいものとなった。

 残り200mで内田騎手のアクションがもう一段大きくなり、ムチが一発二発。カネヒキリを1馬身振り切ったところがゴール。勝ちタイムの2:02.1は当時のレコード、3着サイレントディールは遥か6馬身後方だった。

 この勝利によって南関東古馬G1完全制覇、地方所属馬として初となるGI級競走5勝の大偉業を達成。後世に語り継がれる、両雄が死力を尽くした名勝負は、地方の雄の歴史的快挙で幕を閉じたのだった。

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