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【書く書くしかじか】木村厩舎快進撃の秘密はチャレンジ精神

スポニチ
  • 2023年01月25日(水) 10時00分
 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の田井秀一(30)が担当する。22年度のJRA賞優秀技術調教師に選ばれた木村哲也師(50)の快進撃の理由について考えた。

 イクイノックスの圧勝で幕を閉じた有馬記念の翌朝、美浦トレセン北地区にあるレンガ造りの厩舎に木村師の姿があった。記者でさえ、有馬記念の夜は羽目を外したくなるものだが、師は夜遅くまでテレビ生放送のインタビューなどをこなし、普段通りに早朝から調教を指揮。「有馬記念はやはり特別で、まだ夢の中の世界にいるような感じ。でも(仕事は)いつも通りですよ」と目尻にしわを寄せた。

 昨年度の木村師はJRA賞優秀技術調教師(年度中の勝率、1馬房あたりの勝利度数、獲得賞金、出走回数の得点で決定)を受賞。4年ぶり2度目だ。美浦で同賞を複数回獲得したのは藤沢和雄元調教師(93、95〜00、02、05年)、堀宣行師(16、17年)に次いで3人目の快挙だった。

 厩舎の強みはそのチャレンジ精神にある。「厩舎スタッフには“同じことはやっていても駄目”と口酸っぱく言っています。新しい失敗をしていかないと次につながらないので」。目まぐるしく調教技術が進歩する現代競馬において、現状維持は後退と同義。それは現役最強イクイノックスも例外ではなく、有馬記念では踏み込んだ調整を施したという。テーマは「ワールドスタンダードな前進気勢」。

 例えば、追い切り以外の速い時計を出さない普段の調教からも絶妙なあんばいで前進気勢を失わないように騎乗しなければならない。担当の楠助手は「経験したことのないレベルの馬なので何が正解か分からない。新しい挑戦、学ぶことだらけです」と、その難しさを証言する。人の努力にイクイノックスは道中のうなるような前進気勢で応えてみせた。師も「レース2日前に、こんな素晴らしい馬がこれだけの状態で調教している姿、自分のキャリアでもう二度と見られないのかもと思うほどで…。芸術的なオーラというか、美しかったですね」と感慨深げに振り返る。

 さらなる躍進を目指す23年。木村厩舎は皐月賞ジオグリフがサウジカップ(2月25日、キングアブドゥルアジーズ)に出走予定。イクイノックスドバイターフドバイシーマクラシック(3月25日、メイダン)に予備登録した。「22年は(サウジとドバイに遠征した)オーソリティが引っ張ってくれて、厩舎に新しい自信をくれた。シーマクラシックでは藤原厩舎(1着シャフリヤールを管理)の素晴らしい仕上げに、打ちのめされる思いも経験しました」。挑戦の先に成長あり。日頃から取材する美浦トレセンにワールドスタンダードを追求する厩舎があることは記者にとってこの上ない幸せだと改めて感じた。

 ◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の30歳。高校卒業後に道営で調教厩務員を務めた。阪大法学部卒業後スポニチへ。19年春から競馬担当。22年からBSイレブン競馬中継で解説。

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