平成元年の競馬は熱かった。
桜花賞は
武豊&
シャダイカグラが出遅れからの逆転V。
マイルCSでは
オグリキャップが驚異の巻き返しで
バンブーメモリーとの一騎打ちを制した。そんな1年の締めくくりとなる
有馬記念で
オグリキャップや
スーパークリークを倒し、平成最初の
年度代表馬に選ばれたのが
イナリワンだった。
86年に地方・大井でデビューすると破竹の8連勝。87年の
東京王冠賞、88年の
東京大賞典などビッグレースを次々に制し、89年に中央へ移籍した。初戦の
すばるSが4着、
阪神大賞典が5着と連敗したが、
武豊に乗り替わった
天皇賞(春)でGI初制覇。続く
宝塚記念では10番人気の
フレッシュボイスとの一騎打ちを制し、GI2連勝とした。一転、秋は
毎日王冠が2着、
天皇賞(秋)が6着、
ジャパンCが11着と苦しんだが、名誉挽回を期して
有馬記念に参戦する。単勝は
オグリキャップが1.8倍で圧倒的な1番人気。2番人気は
スーパークリークで3.1倍、3番人気は
サクラホクトオーで12.6倍。
イナリワンは16.7倍の4番人気だったが、レースでは先に抜け出した
スーパークリークをゴール寸前で鼻差とらえ、3つ目のGIタイトルを獲得。文句なしの成績で
年度代表馬に選ばれた。
91年から種牡馬となると、地方で
ツキフクオーや
イナリコンコルドなどの活躍馬を輩出。中央でも
シグナスヒーローが重賞の名
バイプレーヤーとして存在感を見せた。04年の種牡馬引退後は繋養先を転々としたが、最後は北海道屈指の観光地として知られるトマムリゾートの程近く、北海道占冠村のあるぷすペンションで悠々自適の日々。そして8年前の16年2月7日、老衰のために32歳で死んだ。大往生だった。
イナリワンの血を引く
JRAの現役馬は3頭。いずれも
JRAで3勝を挙げた
ワンダーアロマ(母は重賞2勝の
ラブリースター、姉は
桜花賞馬の
ワンダーパヒューム)の血を引いている。
ワンダーウィルク(牡4、栗東・
今野貞一厩舎)は昨年8月の地方交流で初勝利。昇級戦で2着に来たので、2勝目を挙げる日もそう遠くないだろう。さらに、ウィルクの弟の
ワンダーエッジ(牡3、栗東・
石坂公一厩舎)も先週の新馬で2着に好走したので、先々が楽しみだ。また、
ワンダーミズ(牝3、栗東・
牧田和弥厩舎)も3戦して4着が最高だが、初勝利を目指している。願わくはこの中から活躍馬が出て、
イナリワンの血を次代につなげてほしい。