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【書く書くしかじか】競馬開催を支える 一流馬運車とドライバーの存在

スポニチ
  • 2023年05月31日(水) 10時10分
 ▼日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鈴木悠貴(32)が担当。今回のテーマは「輸送」。1947年に創業し、現在92台の馬運車を持つ日本馬匹(ばひつ)輸送自動車株式会社の総務部長・奥山隆一さんに話を聞き、輸送の裏側に迫った。

 馬を安全かつ快適に輸送する馬運車。最大6頭を積むことが可能で、1台20年近く使用する。そして実は?かなりの高級車。「具体的な金額は控えますが、例えばフェラーリあたりと比べてもかなり高く、立派な一軒家を建てるのに近いかもしれません」と日本馬匹輸送自動車の総務部長・奥山さんは話す。

 それもそのはず。馬は繊細な動物のため性能が最先端。「エアサスペンション(走行中の衝撃を和らげる足回りの機構)を完備するほか、馬室には強力なエアコン2台と監視カメラを装備。馬が突起物などで思わぬケガをしないよう車内のレイアウトにも細心の配慮がなされています」。まさに「馬優先」の設計だ。

 約70年の歴史がある馬運車。今後についても発展の余地はあると奥山さんは語る。「センサー技術の発達によるさまざまな安全性能の向上は大きな流れかと思います。また、いわゆる輸送熱の防止ということで馬室内の細菌の増殖を抑える試みが同業他社でもいろいろと行われており、日本馬匹輸送自動車としても研究していきたいと考えています」。

 「馬優先」はドライバーも同じ。奥山さんは「急ブレーキや急なハンドル操作は馬のバランスを崩しケガのもとともなりかねませんので、そのためにも十分な車間距離をキープして、よくいう予測運転・防衛運転をすることが大切だとドライバーから聞いています」と運転の難しさを説明する。走行するのはあらかじめJRAが指定した経路。道の傾向も覚えてくるようで「デコボコや信号のタイミングがおのずと分かってきて、それがスムーズな運転に役立っているそうです」。

 東京・中山の当日輸送はもちろん、福島、新潟、中京辺りまではワンマンでの運行が基本。長時間運転になるとアクシデントも少なくない。「ベテランドライバーに聞いた話で、急な割り込みなどでヒヤッとすることは時折ありますが、これまでで一番のピンチといえば車両故障。サービスエリア内で後続の予備車両(空車)に馬を積み替えて事なきを得ましたが、運行前の点検で全く問題なかったエンジンが急に不調になった時は、かなり慌てたと言っていました」と裏話を明かした。

 朝3時から働く場合もあり、睡眠時間が不規則になりがちな仕事。奥山さんは「寝不足は絶対に避けなければならないので、皆それぞれのやり方にはなるのですが、体調の管理にはいつも気をつけています。必要なときにすぐに寝られるようになったと話すドライバーもいますね」と健康の重要性を強調する。円滑な競馬開催の裏には、一流の馬運車と一流のドライバーの存在があった。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の32歳。千葉大学法経学部卒。今年1月から競馬担当。

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